第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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あれからどのくらい経ったのか。 ジャッキの部屋の大きな窓は、ハチミツ色に染まってる。 てことは……少なくとも数時間はこうしてるんだ。 『てやー!』 飽きるコトなく(エア)カタナを振っていた。 そう、ウチは今、大倉の戦う姿を頭に浮かべ、忠実にマネをしているのだ。 なんでこんなコトをしてるかって言うと、『もう考えない』って思っても、大倉の顔が浮かぶでしょ、ずっとずっと浮かぶでしょ。 何をしたって浮かぶんだから、いっそのコト、積極的に浮かべてみようと思ったの。 さっき偶然、ストレッチがカタナさばきに似ているコトに気が付いたから、 【霊体(からだ)を動かす】 + 【大倉のコトを考えちゃう】 この2つをを合体させた。 これが結構イイ感じなの。 じっとしたまま考えるより、動いた方がモヤモヤが減るんだよ。 確かこうだったよな、えっと……2本のカタナを両手で持って、胸の前でクロスにさせて、腰を落としてニヤァと笑って(大倉がしてた)、それから一気に左右に振り切る! 『とりゃー!』 き、きまった! どうしよ、ウチ完璧だよ……! ずっと視てたからね、大体は覚えてるんだ。 ホントは鏡が視れると良いんだけどな、ユーレーだから現世の鏡に映らない。 『休んでるヒマはない! 新たな悪霊が100体も来ちゃったよ! 岡村! 気を抜いちゃダメだからね!』 ノリにノッて【妄想、始めました】。 妄想の中のウチは霊媒師だ。 すんごい霊力(ちから)があるの、自前の霊力(ちから)とバラカスのサーバーと両方使ってるからもう無敵状態。 岡村は相棒で一緒に悪霊と戦ってて、それから、それから、大倉は……一般人。 ウチが守ってあげるんだ。 『ヤヨイ、大倉に結界を! そばにいてあげて! ウチはカタナで悪霊達をバッサバッサと斬り捨てちゃうから! あいやー!』 飛んだり跳ねたり大忙しだ。 なんたって100体以上の悪霊達だもの。 休んでるヒマはない。 てやー! とりゃー! あいやー! 機敏な動きで(エア)カタナを振りまくり、霊体(からだ)を動かし続ければ、軽い疲労と引き換えにモヤモヤが減っていく。 頭の中の積もり積もった色んな想いが、徐々に整理されていく。 ウチはジャッキが大好き。 バラカスも白雪ちゃんも大好き。 パパもママもジーナもタッキーもフェアリーゴッドマザーも大好き。 それと…… ジャッキのコトを抜きにしたら、 シンプルに考えたら、 ウチは大倉も……好きなんだと思う。
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