2369人が本棚に入れています
本棚に追加
あれからどのくらい経ったのか。
ジャッキの部屋の大きな窓は、ハチミツ色に染まってる。
てことは……少なくとも数時間はこうしてるんだ。
『てやー!』
飽きるコトなく(エア)カタナを振っていた。
そう、ウチは今、大倉の戦う姿を頭に浮かべ、忠実にマネをしているのだ。
なんでこんなコトをしてるかって言うと、『もう考えない』って思っても、大倉の顔が浮かぶでしょ、ずっとずっと浮かぶでしょ。
何をしたって浮かぶんだから、いっそのコト、積極的に浮かべてみようと思ったの。
さっき偶然、ストレッチがカタナさばきに似ているコトに気が付いたから、
【霊体を動かす】 + 【大倉のコトを考えちゃう】
この2つをを合体させた。
これが結構イイ感じなの。
じっとしたまま考えるより、動いた方がモヤモヤが減るんだよ。
確かこうだったよな、えっと……2本のカタナを両手で持って、胸の前でクロスにさせて、腰を落としてニヤァと笑って(大倉がしてた)、それから一気に左右に振り切る!
『とりゃー!』
き、きまった!
どうしよ、ウチ完璧だよ……!
ずっと視てたからね、大体は覚えてるんだ。
ホントは鏡が視れると良いんだけどな、ユーレーだから現世の鏡に映らない。
『休んでるヒマはない! 新たな悪霊が100体も来ちゃったよ! 岡村! 気を抜いちゃダメだからね!』
ノリにノッて【妄想、始めました】。
妄想の中のウチは霊媒師だ。
すんごい霊力があるの、自前の霊力とバラカスのサーバーと両方使ってるからもう無敵状態。
岡村は相棒で一緒に悪霊と戦ってて、それから、それから、大倉は……一般人。
ウチが守ってあげるんだ。
『ヤヨイ、大倉に結界を! そばにいてあげて! ウチはカタナで悪霊達をバッサバッサと斬り捨てちゃうから! あいやー!』
飛んだり跳ねたり大忙しだ。
なんたって100体以上の悪霊達だもの。
休んでるヒマはない。
てやー!
とりゃー!
あいやー!
機敏な動きで(エア)カタナを振りまくり、霊体を動かし続ければ、軽い疲労と引き換えにモヤモヤが減っていく。
頭の中の積もり積もった色んな想いが、徐々に整理されていく。
ウチはジャッキが大好き。
バラカスも白雪ちゃんも大好き。
パパもママもジーナもタッキーもフェアリーゴッドマザーも大好き。
それと……
ジャッキのコトを抜きにしたら、
シンプルに考えたら、
ウチは大倉も……好きなんだと思う。
最初のコメントを投稿しよう!