第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『ジャッキ! もう一回いくよ! ちゃんと視ててね! てやー!』 仕事が終わり、夕飯とお風呂も済ませたジャッキ。 リビングでのくつろぎタイムにカタナさばきを披露した。 『えぇ……っと、…………マジョ……?』 ジャッキはそんなウチを視て驚いているようだった。 ポカーンと大きく口を開け、なにも言わずに固まっている。 ん、そりゃ驚くよね。 まさかウチが、こんなに上手にカタナが出来るとは思ってもみなかっただろうから。 『大倉ね、こんな感じで戦ってた! とりゃー!』 飛んで跳ねて(エア)カタナを振りまくる。 鏡は視てないけど動きは完璧なはずだ。 『あの、ちょっと、マジョ? どうしたのよ、急に』 ゴッツイ片手を上げたり下げたり。 ソワソワジャッキがウチを呼ぶけど待って、カタナはまだ終わってないの。 『あいやー! ジャッキはぜんぶ視てないからウチが教えてあげる! 大倉、すんごい強かったんだよ!』 『あ……うん、そっか、うん、弥生が強かったのか』 『うん! こないだね、みんなでジャッキを助けに行った日! ジャッキのオウチに着いてすぐ、リビングに赤黒い悪霊が出たんだ! 大倉はウチを庇って1人で滅しに行っちゃったの!』 『ああ、アイツならそうするだろうな』 『それからね! お風呂場で倒れてたジャッキを助けたのも大倉だよ! 服が濡れるのにさ、かまわず湯船に入ってさ、ジャッキを出してあげたんだ!』 『ん、そっか』 『ジャッキを追って公園に行った時もそう! 数えきれない悪霊がいてね! ウチ、怖くて足がすくんだの! でも大倉、「さぁ! 喧嘩のお時間です!」って斬り込んだんだ! すごかったんだよ! こんな風に2本のカタナで……ちぇすとー!』 『ぶふぉっ! や、失礼、”ちぇすとー” って……マジョさん? そんな言葉どこで覚えたの?』 『ん? こないだ一緒に視たじゃない。ネットの ”時代劇ちゃんねる” 、サムライがそう叫んでたよ。あれ? 日本人はみんな言うんじゃないの?』 『時代劇……あー! そういや言ってたね。マジョよく覚えてるなぁ。でも残念ながら ”ちぇすとー” はあんまり言わないねぇ』 『えぇ!? そうなんだ! カッコイイからみんな言えばいいのに!』 『そうねぇ、中々普段の生活で言う機会がないからねぇ。そんなコトよりどうしたのよ。さっきからずっとアヤシイ儀式……ゲフンゲフン、や、なんでもない。そうじゃなくてエアカタナをしてるじゃない。弥生の霊刀がそんなに気に入ったの?』 『うん! こうして霊体(からだ)を動かしてると頭の中が整理されるの、モヤモヤが減るんだよ、』 『……マジョはモヤモヤしているの?』 『あ……うん、してる』 『なにに? もしかして……弥生の事かい?』 『……うん、』
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