第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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わぁ! 白雪ちゃんのほっぺがバラ色になった! パパ、良かったねぇ。 白雪ちゃん、バラカスと付き合って幸せだって。 えへへ、ウチも嬉しいなぁ。 『マーちゃんが無理してないなら安心したわ。話してくれてありがとう』 恋する乙女はふわりと笑い、ウチの口に和菓子をひとつ放り込む。 あ、これ抹茶のだ……おいし。 『ううん、ごめんね。きっとウチ、言葉が足りなかったんだ。心配かけてたんだね。大丈夫だよ。ジャッキはもちろんだけど、大倉とも仲良くやってるもの』 『仲良いのが一番よ。弥生ちゃんも一緒にいようって言われた時は嬉しかったでしょうねぇ』 白雪ちゃんは大倉の喜ぶ姿を浮かべてるのか、目を細めて上を向いた。 ウチは当時のコトを思い出す、ははは……これが中々大変だったんだよね。 『あーうん、嬉しかったとは思うんだけど、大倉にその話をした時、すんなりイエスと言わなかったんだ』 『どうして? あ……そっか、そうよね。弥生ちゃんは現世、地球に生きてるんだもの。そういう結婚の形に抵抗があっても不思議じゃないわよね』 『……それがねぇ、大倉が気にしたのはそこじゃなかったの。あの子、昔から親とうまくいってなくて、家族のカウントから外されてるって言ったでしょ。高校を卒業して実家を出るまで、ずっと邪魔者扱いされててさ。ん……酷いよね。そんな大倉だから、ウチとジャッキの邪魔したくないって、気持ちだけで充分だって、首を縦にふらなかったの』 思い出すと切なくなる。 最初、その話はジャッキだけでしにいったんだ。 話し終えると大倉は『マジョリカに会いたい』そう言って、ウチに会いに来たの。 ジャッキのオウチで久しぶりに視た顔は、貧血で青白く、なのに嬉しそうに笑ってた。 だけどその後モジモジしながら、らしくないほど小さくなって言ったんだ。 ____マジョリカ……、 ひさしぶり、……元気だった? あのさ、……んとさ、……ジャッキーから聞いたよ。 アタシと……せ、千年たっても一緒にいようって、これからの未来、……アタシを含めた3人で歩んでいこうって……あんたが言ってくれたんだってね。 ……ありがと……まさかあんたがそんな事言ってくれるなんて、まるで夢みたいだ、……ああ待って! まだイエスとは言ってないよ。 え? 嬉しくないのかって? ううん、嬉しいよ、嬉しいに決まってるじゃない。 あんたは優しいね、心配になっちゃうくらい優しいよ。 あのさ、ありがと、気持ちだけもらっとく。 でもさ、せっかくだけど、そういう訳にはいかないよ。 マジョリカはジャッキーの奥さんで、2人は夫婦で家族じゃない。 アタシがそこに割り込んで邪魔をしたくないの。 誰かの大事な家庭に他人が混じっちゃダメなんだ。 だから、……だから、気持ちだけで充分。 大丈夫だよ、アタシは強いんだ。 独りは慣れてるし、それにヤヨちゃんがいるもん。 だからホントにダイジョウブ____ ………………ウソツキ、 大倉はウソツキだ。 なにが ”ダイジョウブ” よ。 そんなに泣いて、 ぜんぜんダイジョウブじゃないじゃない。
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