第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『弥生ちゃん……そんな事を言ったの』 薄っすらと目が赤い。 白雪ちゃんは薄く眉間にシワを寄せ、なんともいえない顔をした。 『大倉はさ、二言目には ”他人がジャマをしたらダメなんだ” って、そればっかり言ってたよ。多分だけど……昔、同じ事を言われ続けてきたんじゃないかな』 『……そうかもしれないわね』 あの時、ウチと大倉は時間をかけて話をした。 ジャッキはいたけど、ひとまず2人で話をさせてほしい、しばらく傍で視守ってほしい、そうお願いしたんだ。 だけど……話はいつまでたっても平行線だった。 一緒にいようと言うウチと、それはダメだと言い張る大倉。 ヘンな所がジャッキに似てる、イヤになるほど頑固なの。 だけどウチはこの子といると決めたんだ。 だから退く訳にはいかない。 『大倉はウチのコトがキライなの?』 「キライな訳ないよ。だってあんた優しいもの」 『それなら良いじゃない。これから3人で一緒にいようよ。ウチもジャッキも大倉のコト邪魔だなんて思わないよ。それに、他人が……って言うけど、ウチとジャッキも元々は他人だよ。他人でも好き同士なら家族になれるじゃない』 「ん……そうかもしれないけど、でも……」 『でも、……なによ』 「マジョリカはさ……アタシに恩を感じてるから、何かしなくちゃいけないって思ってるんじゃないの? だとしたら、そんな事は考えなくていい。アタシは霊媒師で悪霊滅して給料貰ってるんだ。あれくらいはいつもの事だし、そもそも強い方が弱い方を守るのは当たり前だろ? 特別なコトじゃないさ。だから良いんだよ、気にしなくて』 『…………あのね大倉。確かにウチは大倉に守ってもらって感謝してるよ。でもさ、それだけじゃないの。……正直に言えば、最初から3人でって……思ったんじゃないんだ。別々の未来を歩む大倉に、ウチに出来る事はなにもないって思ってた。気にはなるけど仕方がないと思ってた。…………だけどね、浮かんじゃうんだよ、』 「浮かぶ……? なんの事?」 『浮かぶのは大倉の顔。頭の中にしょっちゅう浮かぶの。そうしようと思ってる訳じゃないのに、悲しそうな顔して背中を丸めて、まるで子供みたいなあんたの顔が浮かんじゃって消えてくれないの』 「…………マジョリカ……」 『顔が浮かべばどうしたってあんたのコトを考えちゃう。今頃なにしてるのかなとか、ゴハン食べてるのかなとか、……もしかして、淋しくて泣いてるのかな、とか』 「………………」 『1度気になりだすと止まらないの。せっかくジャッキと一緒にいるのに、あんたの事ばっかり考えちゃう。そんなのがずっと続いて、きっとこれからも続くんだろなって思ったらさ、もーやだー! ってなっちゃったの』 「……ご、ごめん」 『やだ、あやまらないでよ、……ウチこそごめん、言い方が悪かったね。違うんだ、顔が浮かぶコト自体がイヤなんじゃなくて、あんたが独りで辛いのがイヤだったんだ』
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