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そう言って少し淋しそうにする田所さんを、ユリちゃんは右に左に何度も見ながら、ぷっと小さく吹き出した。
『な、なぁに?』
「だって、ふふふ。ママも全然幽霊っぽくないんだもん。優しくてのんびりしてて、ちっとも昔と変わらない」
『……ママ、も?』
「うん! ママも、婆ちゃんも、それから爺ちゃんも生きてた頃とちっとも変らない、ってゆーか爺ちゃんなんか、さっき清水さんと取っ組み合いの喧嘩したんだよ? 幽霊になってまで喧嘩する事ないのに。ねっ! 爺ちゃん!」
クルリと振り返った弾けるような笑顔のユリちゃんに、お父さんは『おぅあぁ?』と意味不明な声を漏らし、ササっと横に動いた。
え、ちょ、お父さん、なんでお母さんの後ろに隠れるんですか?
てか、お母さんが小柄すぎてちっとも隠れていませんよ?
「爺ちゃん……? なにやってんの? まさかそれ隠れてるつもり? そもそもなんで隠れんの?」
ユリちゃんが呆れた声で、僕と同じ疑問を口にした。
『なっ! 馬鹿! ユリ、なんで爺ちゃんが隠れなくちゃなんねぇんだ!』
うわぁ、言ってる事とやってる事の乖離がスゴイ。
隠れ家にされているお母さんも(ぜんぜん隠れちゃいないけど)ヤレヤレといった微妙な笑顔で、肩越しに声を掛けた。
『ほら……お爺さん、こんな所に隠れてないで、あんなに貴子に逢いたがってたじゃありませんか』
『いや、そうなんだけどよ、なんつーか……心の準備がよ、』
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