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「ふはぁ……もうヨレヨレだ……でも出社せねば……やっと会社まで辿り着いたんだ、あともうチョット、もうひと踏ん張り……頑張れ、僕、」
自分自身を励ましながら、門から敷地に一歩足を踏み入れた……が、すぐになんとも言えないイヤーな気持ちになった。
心の奥がざわつくような、不安の波に呑まれるような、全力でココから逃げたい、そう思わせる嫌な気配。
全身に鳥肌が立つ。
僕の隣の大福なんて『フシャーッ!』と凄んで、ザッザッザッと地面の砂をかいている。
お姫……激しいな。
でもキモチは分かるよ。
僕もこの気にあてられてるもん。
出来る事なら一緒に砂をかきたいくらい……なんだけど、これが正解、これで良いのだ。
この強烈な不安感は、会社の敷地に入ると同時に沸き上がる。
ついでに言うなら頭痛に肩こり眩暈に動悸、ありとあらゆる身体の不調に襲われる(敷地から出れば即回復)。
どうしてこんなコトが起こるのか……と言うと、社屋全体に ”生者除けの結界” を張ってるから。
これさえ張れば生者は中に入ってこれない(や、入ろうと思えば入れるけど、何も知らない一般の方は嫌な感じにビビッて帰っちゃう)。
夏の間の繁忙期、社長を含めたウチの社員は全員現場に出ちゃうからね。
そんな中、事務所にユリちゃん1人だなんて物騒にも程があるでしょ。
悪いヤツを近づけない、その為の ”生者除けの結界” なのだ。
もちろん効果は絶大だ。
なんたって結界は、水渦さんの ”負の感情” が原材料。
あの圧に勝てる猛者はまずいない、ただし……!
あくまでも ”生者除けの結界” だから、悪人も善人も区別はない、どちらも公平に除けるんだ。
ゆえに出社がガチでキツイ。
正確には会社の門から玄関までがヘルロードと化している。
それでも僕は行かねばならない。
あらゆる不調を堪能しながら、気合で事務所に行くしかないのっ!
あ、でもその前に。
僕は目を閉じ両手を合わせ、白い霊力をチャージした。
白の霊力は癒しの霊力。
溜めた霊力はケチケチせずに、僕の愛しのスィートハニー、ベリベリキュートな大福姫に(情報が渋滞中)余すことなく全部たっぷりふりかけた。
「大福、癒しの霊力で包んだからね。これならココを歩いても辛くないと思うんだ。え? 僕? 僕はいいの。大丈夫だよ。なんたってキミは僕のお姫だからね。守ってあげたいんだ。さぁ、行こう!」
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