2367人が本棚に入れています
本棚に追加
「ユリちゃん、とりあえず今日までの交通費の精算をお願いしても良い?」
ゴソゴソとリュックの中に手を突っ込んで、あらかじめ貰っておいた交通費精算の書類を取り出した(もちろん記入済み)。
しかしウチの会社もアナログだよね。
今時、紙ベースの申請書ってどうなのよ。
紙削減、コスト削減、そういうのを考えたら電子データの方が良いと思うんだけどな。
今度社長に言ってみよっと。
そんなこんなで立て替えたお金が戻ってきた。
不思議なもんで、こうして後から貰うとさ、得した気分になるんだよ。
ひゃー、儲かったー! このお金で大福オヤツの ”ちゅるー” を買うぞー! なんて、ウキウキしながら ”かつお味” にするか ”ほたて味” にするか迷っていると、背後から元気な声が聞こえてきたの。
『おやおや、誰かと思えば岡村君と大福ちゃんじゃないですか。久しぶりだねぇ、W県の修行の時以来だねぇ、元気にしてましたか?』
振り向けばちんまりミニマム、白髪頭でニコニコ笑う大好きな先代が立ってるじゃない!
修行の時の若い容姿じゃなくて、元の可愛いお爺ちゃんに戻ってるし!
イケメン18才バージョンも良かったけど、やっぱりプリティ78才が好き!
「うわぁ! 先代ぃぃぃ! お久しぶりですぅぅぅ!」
視えない尻尾が瞬時に生えて、それをブンブン振りまくる。
猫派の僕だがこんな時だけ犬になる。
『本当に久しぶり。岡村君、ごめんねぇ。W県から戻った当日、そのまま嵐ちゃんのヘルプに入ってもらったんだよねぇ。そのあともヘルプのハシゴをさせちゃったし疲れたんじゃない? ウチの会社ね、繁忙期は目が回る忙しさなの。岡村君は初めてだからびっくりしちゃうよねぇ』
先代はそう言いながら、僕の頭をワシワシと撫ぜてくれた。
ああ……事務所は天国、黄泉の国か?
ユリちゃんといい、先代といい、僕はもう癒されっぱなしだ。
グッタリクタクタ、蓄積疲労がほろほろと溶けていく。
「ダイジョウブ、僕、疲れてません! ……って、や、ごめん、それは言い過ぎだな。正直ちょっぴり疲れたけど、ユリちゃんと先代に会って、元気をいっぱいもらいました。これでまた頑張れる! ねぇユリちゃん、今日は誰のヘルプに入れば良い? 僕、張り切って行っちゃうよん!」
最初のコメントを投稿しよう!