第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「ユリちゃん、とりあえず今日までの交通費の精算をお願いしても良い?」 ゴソゴソとリュックの中に手を突っ込んで、あらかじめ貰っておいた交通費精算の書類を取り出した(もちろん記入済み)。 しかしウチの会社もアナログだよね。 今時、紙ベースの申請書ってどうなのよ。 紙削減、コスト削減、そういうのを考えたら電子データの方が良いと思うんだけどな。 今度社長に言ってみよっと。 そんなこんなで立て替えたお金が戻ってきた。 不思議なもんで、こうして後から貰うとさ、得した気分になるんだよ。 ひゃー、儲かったー! このお金で大福オヤツの ”ちゅるー” を買うぞー! なんて、ウキウキしながら ”かつお味” にするか ”ほたて味” にするか迷っていると、背後から元気な声が聞こえてきたの。 『おやおや、誰かと思えば岡村君と大福ちゃんじゃないですか。久しぶりだねぇ、W県の修行の時以来だねぇ、元気にしてましたか?』 振り向けばちんまりミニマム、白髪頭でニコニコ笑う大好きな先代が立ってるじゃない! 修行の時の若い容姿じゃなくて、元の可愛いお爺ちゃんに戻ってるし! イケメン18才バージョンも良かったけど、やっぱりプリティ78才が好き! 「うわぁ! 先代ぃぃぃ! お久しぶりですぅぅぅ!」 視えない尻尾が瞬時に生えて、それをブンブン振りまくる。 猫派の僕だがこんな時だけ犬になる。 『本当に久しぶり。岡村君、ごめんねぇ。W県から戻った当日、そのまま(らん)ちゃんのヘルプに入ってもらったんだよねぇ。そのあともヘルプのハシゴをさせちゃったし疲れたんじゃない? ウチの会社ね、繁忙期は目が回る忙しさなの。岡村君は初めてだからびっくりしちゃうよねぇ』 先代はそう言いながら、僕の頭をワシワシと撫ぜてくれた。 ああ……事務所(ここ)は天国、黄泉の国か? ユリちゃんといい、先代といい、僕はもう癒されっぱなしだ。 グッタリクタクタ、蓄積疲労がほろほろと溶けていく。 「ダイジョウブ、僕、疲れてません! ……って、や、ごめん、それは言い過ぎだな。正直ちょっぴり疲れたけど、ユリちゃんと先代に会って、元気をいっぱいもらいました。これでまた頑張れる! ねぇユリちゃん、今日は誰のヘルプに入れば良い? 僕、張り切って行っちゃうよん!」
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