第二十二章 霊媒師 岡村英海

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大袈裟に両手を広げ、ドンと来い的なアピールをした。 元気が出たのは本当だし、社長不在の今、各現場に誰を行かすか、その振り分けをユリちゃんがしてるのだ(もちろん先代の意見も聞くが、今後の為にもユリちゃんがメインで決めてる)。 なのに僕が疲れた顔をしていたら、ユリちゃん、アサインしにくくなっちゃうよ。 精一杯のアピールに、先に反応したのは先代の方だった。 『あぁん! 若いって良いねぇ! 素晴らしいねぇ! 岡村君、さっそく修行の成果が出たんじゃない? なんだかスタミナがついたみたい。ウチの三男坊がどんどん頼もしくなってくる、……もう、感無量! じゃ、さっそく現場をお願いしちゃおうかな!』 おぉ! 本当に早速だな! でも行くよ、頑張るよ! なんてったって僕は、褒められて伸びるタイプだからね。 先代にベタ褒めされて俄然やる気が出て来たよ! 『ユリちゃん、昨日話したアノ現場(・・・・)にしましょう。岡村君に ”たぶれっと” を渡してあげて』 「はい!」 元気な返事でユリちゃんが、社用タブレットを僕に手渡す。 そして、 「いつもの【依頼フォルダ】に詳細が入ってます。詳しい内容は後で確認お願いします。先に簡単な説明だけ。今回お願いしたい現場は、誰かのヘルプじゃなくて岡村さんお一人で入っていただきます。あくまで現場を視ないと分からないけど、悪霊とかはいなそうです。それから____」 …… ………… ……………… ____それから、 ユリちゃんから説明を聞き終えた僕は、電車に乗って現場へと向かった。 先代は、 『いい? どんな現場でも、驚かないで、怯まないで頑張ってきてね。そう、岡村君はもう新人じゃない。立派なプロの霊媒師だ。ファイトー!』 と、送り出してくれた、……のだが、この現場って……マジか……どうしよう。 大福を膝に乗せ、電車の中でタブレットを立ち上げる。 内容は……確かに悪霊とかはいなそうだな。 どちらかというと平和な感じの内容だ。 ポ現と、それから……ああ、駄目。 集中出来ない、内容が頭の中に入ってこない。 あれよあれよと言ってるうちに、今回のこの現場は完全な僕のソロプレイ……そう、とうとう独り立ちなのだ。 助けてくれる先輩はいない、なにがあっても僕一人で対処する(ウソ、大福先生がいるから僕は恵まれてるけど)。 と言った緊張があるんだけどさ、それ以上に問題なのは…………
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