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……
…………
依頼者宅の最寄り駅に着いた僕は、迷う事無く歩き出す。
時刻は正午、ちょうどお腹が空いてきた頃だ。
テクテクと歩く事20分。
僕の肩には大福が乗っかって、夏の暑さも幽体ボディが冷やしてくれる。
もうちょっと、あとちょっと、
あの曲がり角を右に行ったら…………着いた。
見上げた現場、依頼者の自宅。
どこにでもある建売住宅だ。
2階建ての茶色い外壁。
玄関のまわりには猫の置物が沢山飾ってある。
「ふぅ……なんだか緊張するな。ピンポンする前に……依頼者に電話するのがマニュアルだったな」
そう思い、ポケットからスマホを取り出し、番号をタップしようとした……その時。
ガチャ、
玄関ドアが静かに開いた。
「あ……、」
間抜けな声を出した僕は、そのまま黙って立ち尽くす。
な、なんて言ったらいいのかな……?
言葉に詰まって、挙動不審になりかけた僕に、ドアから顔を出した女性がこう言った。
「あら、やっぱり英海だったのね! ウチの中できなこが二ャー二ャー騒ぎ出したからもしかして……って思ったのよ。あんた急にどうしたの? 連絡もしないで帰ってくるなんて珍しいわね。まぁいいわ。お腹空いてない? 入りなさい。何かつくってあげるわよ」
僕はたっぷり時間をかけて、深呼吸を1回、2回。
そして、
「母さん、僕…………、ああ、うん。いいや、後で話す。先に何か食べさせて」
言いながら僕の実家の、
いや、依頼者のオウチにお邪魔したのだ。
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