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「簡単なもので良いわよね? はい、暑いから素麺。野菜いっぱいのせたからぜんぶ食べなさい」
そう言って出してくれたのは、素麺にたっぷりの野菜がのった一皿だ。
サイコロカットのきゅうりにトマト、刻んだ水菜にオクラに冥加、彩りの錦糸卵に、スタミナの茹でた豚肉……で、その上から麵つゆをダクダクかける簡単料理。
この素麺、懐かしいなぁ。
夏になると、週3ペースで出てくるの。
飽きないようにトッピングは変えるけど、とにかく野菜が多いんだ。
「ゴハンありがと。急でごめんね」
言いながら、ホントは急じゃないのよね、アナタに呼ばれて来たのよねと思いつつ、両手を合わせて「いただきます」をした。
とりあえずお腹空いた、話はあとで、まずは素麺食べてから。
リビングのローテーブル。
家族でゴハンを食べる時、家族みんなでお茶を飲む時、集まるのはいつだってこの部屋だ。
母さんはいつもの定位置、僕の向かいにストンと座る。
「足りなかったらおかわりあるからね」
「ありがと(もぐもぐもぐ)」
「毎日暑いわねぇ」
「そうだねぇ(もぐもぐもぐ)」
「ちゃんと食べてる?」
「うん、(もぐもぐもぐ)」
「ちゃんと寝てる?」
「うん、(もぐもぐもぐ)」
我ながら、返事がすこぶる素気ない。
や、でもごめん、悪気はないの。
久しぶりの実家の素麺、これがなんだか懐かしくって、空きっ腹にウマすぎて、ついつい夢中で食べてるだけなの。
食べたらちゃんと話をするから、……てか、しないと。
どこから話そう、どこまで話した?
前の会社が倒産し、再就職をしたのは話した(電話でだけど)。
でも……霊媒師になったとは言えなかったんだよな。
霊媒師は決して悪い仕事じゃない。
僕としては人の役に立つ良い仕事だと思ってる。
ただ、あんまり一般的じゃあないじゃない。
だから言い出しにくかった。
優しいけれど、少々保守的……そんな両親に心配かけたくなかったし、だから ”手に職系の専門職” とザックリぼかして誤魔化したんだ。
いつかキチンと説明しなくちゃ、分かっていたのに先延ばしにしてきたの。
今日は話そう、全部話そう……てか、話さないと仕事にならない。
しかし……なんて言って切り出そうか。
驚かせないようにしなくっちゃ。
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