第二十二章 霊媒師 岡村英海

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さて……なんて言おう。 もぐもぐと食は進み、懐かしい素麺も残りは僅か。 食べ終わったら話そうと思うんだけど……ココは慎重にいかねばならない。 切り出し案その1____ 聞いて母さん! 僕が急に帰ってきたのは気まぐれじゃあないんだよ! 母さん達、“株式会社おくりび” ってトコから霊媒師を呼んだでしょ? その霊媒師っていうのが何を隠そう……実は僕!  アナタの息子なんでーす! サプラーーーーイズ! 驚いた? 僕、霊媒師になったんだよ! 手に職系の専門職! どの辺が専門かと言うと、指から電気(ビーム)を出しちゃうトコかな! …………いや、これはダメだろ。 こんなん言ったら、余計に拗れるわ。 切り出し案その2____ 食べ終えたら、さり気なくスマホをいじる。 で、ウチの会社のホームページの、社員紹介のページを出す。 それをテーブルに乗せたまま、これまたさり気なくトイレに行く。 んで、戻ってきたら、きっとそれ見た母さんが、「英海、これ何なの? ここにあんたの名前が載ってるけど……」と言ってくる。 んで、んで、そこで僕が「そうなんだ、実はね」と、洗いざらい自白(?)する。 ……って、コレって切り出すとは言わないか。 ただ単に、自分に勢いをつけたいだけだ。 そうしちゃえば言わざるを得ないもん。 てか……そもそも母さん達は、どうやってウチの会社見つけたんだろ? 誰かに聞いたのかな?(誰に?) もしそうじゃなくて、ネット検索でたまたま引っ掛かったのだとしたら、ホームページの社員紹介を見なかったのかな?(セキュリティ上、顔写真は載せてないけどフルネームは載っている) 見てれば電話くらいかけてきても良さそうだけど……電話なんてなかったし、今の母さんの様子じゃあ、どうも僕が霊媒師やってるって知らなそうなんだよな。 でもまてよ……、これが名演技だったらどうする? まさか……すべてを知った上で僕を呼んだとか言わないよねぇ……? だとしたら、それはそれでイヤなんですけど。 頭の中はグルングルン。 それでも口は休まずに、残り一口、素麺を平らげた。 「ごちそうさまでした。あーおいしかったー」 膨れたお腹をさすさすしながら、淹れてくれたハーブティーに手を伸ばす。 さすがは母さん、食後のお茶を出すタイミングが絶妙だ。 僕だとこうはいかないよ、数秒遅れが出てしまう。
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