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「そんなんで足りたの?」
僕が食べるのをずっと見ていた母さんが言った。
足りたの? って、けっこう大盛、充分おなかいっぱいです。
「うん、足りた。ありがとね」
「それなら良かった。そうだ、あんた素麺持って帰りなさいよ。いっぱいあるから後で紙袋に入れてあげる。あと缶詰とかふりかけとか保存がきくものもいるわね。そうそう、こないだトイレットペーパーが安かったからたくさん買ったのよ。それもあげるわ。あとはお米と味噌と醤油と麺つゆと、」
僕に持たせるお土産リストを頭に浮かべて、あれやこれやとブツブツ言ってる母さんに、
「ちょちょ、待って。僕、電車で来たんだ。そんなに持って帰れないよ」
と言ってみる……と。
「あらそう? じゃあ宅急便で送ってあげるわ。大きな箱あったかしら? なかったら貰ってこなくちゃ」
「宅急便か、助かるなぁ。じゃあさ、さっき言ったのぜんぶ送って!」
わぁ、嬉しい。
どれもこれも生活必需品だからね。
買えばけっこうお金がかかるし、買い物だって大変だ。
いただけるなら、こんなに嬉しいコトはない。
実家ってありがたいなぁ。
素麺はおいしかったし来て良かったなぁ(遊びに来たんじゃないけど)。
僕がホクホクしていると、
「分かったわ。それで? 英海は今日なにしに来たの?」
現実に引き戻された。
「何しにって……そりゃあ」
呼ばれたから来たんだよ。
”霊媒師一丁!” って、昨日依頼したでしょう?
「なによ、歯切れが悪いわね。どうしたのよ、なんかヘンだわ。…………あっ! 分かったー! あんた、転職して間もないからお金がないんでしょ! それでゴハンを食べに来たのね?」
ひらめいた! 的な感じで僕に詰め寄る母さんだったが、ち、違うんだ。
「そういう事ならいくらでも食べさせてあげる。今夜泊っていけるんでしょ? 晩ゴハン何食べたい?」
嬉々として母さんは、僕に食べさす気満々だ(嬉しいけど、食べるけど)。
今夜泊っていくかって?
泊りますとも、……てか、仕事が完結するまで帰れませんから。
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