第二十二章 霊媒師 岡村英海

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と、とりあえず喉を潤し落ち着こう。 出されたお茶はペパーミント。 爽やかな香り、スッとする清涼感、夏の暑い日には持ってこいの一杯だ。 一口飲めば気分も晴れて、リフレッシュされるんだ。 ごくごくごく、はぁぁ……おいしい。 一気に飲み終え、セルフでおかわりもう一杯。 大丈夫、飲んだらなんだか落ち着いた(早いな、プラセボ効果か?)。 そうだよ、僕は考えすぎたんだ。 確かに両親(ふたり)は保守的だけど、確かに特殊な仕事だけれど、キチンと話せばきっと分かってくれるはず。 それにさ、 ”霊媒師一丁!” って仕事の依頼をするくらいだもん。 胡散臭いと思ってるなら呼ばないでしょ(たぶん)。 うん! そーだ、そーだよな!  ヨーシ、カミングアウトしちゃうぞー! 「ねぇ、」 テーブルの向こう側、母さんは「ん?」と短く返事をくれた。 アウチ……いざとなると緊張するな……でも大丈夫、現場を思い出せ。 悪霊と戦うより、コッチの方がぜんぜんマシだ。 僕、ファイッ! 「あのね、こないだ電話で話したじゃない。僕の仕事は ”手に職系の専門職” だって」 「言ってたわね。具体的にどんな仕事なのって聞いたのに答えてくれなかったけど」 「あ……ごめん、うん、そうだったね。あの時は、なんて言うかその……そう、特殊な仕事だからどう説明していいか分からなかったんだ」 「あら生意気言って。私だって説明してくれたら分かるわよ」 「そ、そう? でもさ、前の会社の時、こんな仕事してるんだよって説明したけど、分かんないって言ってたじゃない」 「そ、そんなコトないわよ。確か ”通信販売” の会社だったわよね。私、服はだいたい通販だから分かるのよ」 「……母さん、 ”通信販売” の会社じゃないよ、 ”通信会社” だよ。ネット回線とかオフィス機器の販売してたの。だから婦人服は売ってないし」 「あ、あら、そうだった? ま、まぁ、似たようなもんじゃない」 「……似てない、」 「………………」 ………………、親子の間で暫しの沈黙。 ちょうどその時、僕の愛しのプリンセスが『うなぁぁ……』と、ハイヒールの形で伸びをした。
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