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『くはぁぁぁぁ…………』
伸びをしてから、大きなお口であくびをひとつ。
その後はいつものルーティン、ぽっちゃぽちゃのゴージャスボディを全身くまなく毛繕い。
起きてすぐにお手入れ……さすがはお姫、オシャレ黒帯だ。
大福が起きる少し前。
実家に着いて早々、猫又は家の中をウロウロ歩き、そこいらじゅうの臭いを嗅ぎまわっていた。
実家に来たのは初めてだし、それにココには岡村家のスーパーアイドル、茶トラのきなこ(女の子、12才)がいる。
どこもかしこも知らない匂いでいっぱいだから、気になって仕方がなかったのだろう。
あっちでスンスン、こっちでスンスンと忙しかったのだが、一通りの大福チェックが終わると、ようやく僕の隣でぷーぷーと眠りだしたのだ。
それが今、お目覚めになられた大福は『うなぁん』と可愛く一声鳴くと、ピョンッとテーブルに飛び乗った。
そしてそのままトコトコ歩き、母さんの目の前でピタリと止まると、首を傾げて覗き込む……えっと……大福さん? どうしたのかな? かな?
……
…………
「似てないコトもないんじゃない? 思い出したんだけど、うちのプリンターのコピー用紙、英海の前の会社からネットで注文したコトがあったわよ? やっぱり通信販売の会社じゃない」
え? あぁ母さん、まだその話してたの?
僕が ”似てない” って言ったからムキになっちゃったんだ。
この人けっこう負けず嫌いだからねぇ……って、そんなコトよりナニこの状況。
霊感のレの字も無い母さんは、すぐ目の前に猫又がいるとも知らずに、”通販通販” 騒いでる。
その猫又は母さんの顔をまじまじ視たと思ったら、今度は振り向き僕の顔をジッと視る。
お得な三尾を高速フリフリさせながら、交互に何度も僕らを視たあと力強くこう鳴いた。
『うなんっ! うななな!』→訳:スゴイ! そっくり!
可愛いおめめをキラキラさせて、”うななな、うななな(そっくり、そっくり)” 大騒ぎ。
や、ま、そりゃそうだ、親子だからねぇ。
しかも僕は母さん似、自分でもよく似てるなぁって思うよ。
「コピー用紙って重たいから通販が良いのよね。英海の会社が倒産しなければ続けて買ったのに」
ぼやきの主の鼻先を、お姫がスンスン嗅いでいる。
自分から嗅ぎにいったってコトは……どうやら母さんのコトが気に入ったみたいだ。
嬉しいなぁ。
大好きな猫又が僕の家族を好いてくれる。
ああ……母さんにも大福が視えたら良かったのに。
ウチの家族は大の猫好きだ。
僕もたいがい相当だけど、両親の猫愛は僕のさらに上を行く。
猫の為ならどんな努力も、どんな労力も惜しまない。
猫が絡めば白い物が黒どころか七色に変わる、根っからの下僕体質なのだ。
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