第二十二章 霊媒師 岡村英海

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後でお姫に頼んでみようかな。 姫の妖力(チカラ)を使えば、霊感の無い人だって霊を視るコトが出来る(一時的なものだけど)。 猫好きの両親(ふたり)に、天使すぎる大福を視せてあげたいよ。 視たらきっと大騒ぎだ。 ____キャー! カワイイー! 真っ白ー! ____ふこふこー! ツヤツヤー! ____ウチのきなこと同じくらい可愛いー! ※岡村家の猫の褒め方はこう! なんてね。 両親(ふたり)のシャウトが耳に聞こえてくるようだ、…………あ、そういえばきなこは? リビングにいないってコトは…… 「ねぇ母さん、きなこは2階? この時間はお昼寝タイムだと思うけど、2階(うえ)で寝てるのかな?」 さっそく聞いてみる。 きなこに最後に会ったのは今年のお正月。 久しぶりだし、ホントは今すぐにでも抱っこがしたい。 だけどきなこは12才、人間でいえば64才の熟女さまだ。 若い頃とは違うから、無理をさせたりストレスを与えたりしたくない。 猫にとってはお昼寝だって大事な仕事。 本ニャン自ら起きるまで、下僕はジッと待つしかないの。 とは言え、どこでお眠りあそばせてるのか、場所だけでも知っておきたい。 それが下僕心というものさ(岡村家だけか?)。 「2階よ。あんたの部屋で寝てるんだと思うわ。相変わらず英海のベッドがお気に入りだから。……きなこね、最近昼寝をよくするのよ」 そう言った母さんの顔に陰りが見える、……どうしたの?  きなこになにかあったのか……? 「きなこがよく寝るのはいつものコトじゃない、……それとも、なにかあったの? 身体の調子が悪いとか……?」 不安になる、きなこは生きた猫なのだ。 病気やケガもありうるし、しかも年齢的にシニア猫、なにがあってもおかしくない。 「うん……それがね、先月くらいからかしら。きなこ、夜になると絶叫に近い大声で鳴くようになったの」 母さんがため息をつきながらそう言った。 絶叫に近い声……? お婆ちゃん猫なのに? どうしてまた…… 「どこか身体が痛いのかな……? きなこ、病院連れてった?」 「もちろん。父さんも心配して有給取ってくれたの。だから2人で行って来た。でもね、検査をしてもすこぶる健康。12才とは思えない若々しい猫ですって言われたわ」 「はぁぁぁ……良かったぁぁぁ……身体は大丈夫なんだね。……でも、それならどうして……今までそんな事なかったよねぇ。きなこが若い時だって、絶叫する事はなかった。穏やかな猫だもの」 「そう、穏やかで優しい子。それが夜な夜な絶叫するようになって心配してるの。それにね、叫ぶだけじゃない。たまにだけど、家じゅうを弾丸のように走り回るのよ。ニャオーンニャオーンって叫びながら、ズドドドドーって、私も父さんも驚いてしまってねぇ」 「そりゃ驚くわ……それに心配だ。元気なのは良いけど、身体はお婆ちゃんだからね、走りすぎて関節を痛めたら大変だ」 「…………そうよね、大変よね、大変な事なのよ……あのね、英海。私が今から言う事……笑わないで聞いてくれる?」 母さんは半分笑って半分ひきつって、……そんな何とも言えない表情を見せた。 「もちろん、笑ったりしないよ。どうしたの? 何か心配事? なんでも話してよ」 緊張するな……なにがあった?  一体母さんはを話そうとしてるんだろう?
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