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僕を顔を黙ったまんま、ジッと見つめる母さんは、冷めたミントティーを煽るように飲み干した。
そして、
「…………あのね、おかしな事を言うようだけど……この家……私とお父さん以外に……誰かいるのよ、」
躊躇いがちにこう言ったのだ。
えっと……
誰かいる……の?
誰が……いるの?
今度は僕が黙り込む。
同時、今の言葉がキッカケとなり、頭の中にパズルのピースがゆっくりと降り出した。
きなこ……12才……お婆ちゃん猫……謎の絶叫&弾丸走り……両親しかいないはずの実家……そこで感じる別の誰かの気配……気配の主は生者?……たとえばドロボー……いや……そういう気配なら警察を呼ぶはずだ……なのに呼んだのは霊媒師…………
少しずつ、パズルのピースがはまってく。
そういう事なんだろうな。
ユリちゃんが渡してくれたタブレット。
依頼内容を確認した時、”ポ現” の文字があったもの。
「母さん、 その ”誰か” を視た事はあるの?」
両親には霊感がない。
だからきっと気配だけで視た事はないのだろう、だけど一応聞いてみる。
「……見た事はないわ、でもね、気のせいじゃない。確かに気配がするのよ。それに気付いたのは少し前。暴れるきなこが心配で、様子を見てたら音が聞こえたの」
「足音……」
「そう、あれは絶対足音よ。擦って歩く音だったり、階段を上がってるのかギシギシいう音だったり……それとリビングにいた時、2階からドアを開ける音も聞こえた。あと、テーブルの上に置いてたリモコン各種が勝手に落ちた事もあったわね」
言い終えてため息をつく母さんと目が合った。
僕もつられてため息をつく。
「そう……なんだか気持ち悪いね」
霊媒師にあるまじきではあるけれど、想像したら鳥肌が立った。
そりゃそうだろ。
普段は温和なお婆ちゃん猫、きなこの謎の荒ぶりだけでも不安になるのに、夜中にそんな音が聞こえてきたら……不気味に思うでしょうよ。
母さん、きっと怖かっただろうな。
「英海、私の話……信じてくれる?」
そう言って、母さんは僕を不安げに見た。
信じるかって?
信じるよ、当たり前じゃないか。
だってさ、僕はあなたの息子だし、
それにさ、言ってはないけど霊媒師なのだから。
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