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「もちろん信じるよ」
僕がそう答えると、安心したのか母さんは、深く長く息を吐いた。
「そう、良かった……この話をお父さんにした時、最初は信じてもらえなかったの。ほら、お父さんって一度寝ると朝までグッスリ、何したって起きない人でしょ。だから足音に気が付かなくてね」
僕は話を聞きながら、2人のカップにお茶のおかわりを淹れた。
こんな話をしてるんだもの。
ミントの香りで気持ちを落ち着けたいじゃない。
「私だって最初は気のせいだろうと思ったわ。きなこに付き合って寝不足だから、きっと疲れてるんだろうって。でもね、違うの。次の日も、また次の日も聞こえるのよ。毎日毎日聞こえてきたんじゃ、さすがに気のせいと思えない、それに……」
そこで一旦言葉を止めて、母さんは僕の淹れたミントティーをグィグィと飲み干した。
やだ……! またまた良いの飲みっぷり! ……って、これ相当動揺してるな。
いつもならこんな飲み方しないもの。
ハーブの香りを楽しむでも無く、乾いた喉を潤す為だけ、作業のように流し込んでる。
「きなこがおかしくなるのは、決まってその気配がしてから。偶然じゃないわ……変な気配がし始めて、きなこがそれに気が付いて、耳をぴくぴくさせながら空中をジッと見て、それでそのあと……絶叫するの、まるでそこに……誰かがいるみたいにね」
母さんの声は震えていた。
気味の悪い出来事と、それに加えてきなこの事もある。
不安で仕方がないのだろうな。
そういう事情だったんだ……得体の知れない謎の気配、それをどうにかしたくって、両親は霊媒師を呼んだんだ。
…………今すぐ言おう。
僕が呼ばれた霊媒師なのだと。
当然驚くだろうし、たぶん色々ウルサク言われる。
それを思うと気が重いけど、だけど、それでも、安心させてあげたいよ。
僕が来たからもう大丈夫だと言ってあげたいんだ。
「母さん、」
「英海、」
あ……被っちゃったよ。
僕と母さん、2人は同時に声を出し、そして同時に「お先にどうぞ」と譲り合う……が、やっぱりココはレディーファースト、母さんから話してもらうコトにした。
「目に見えないけど気配がする、……これが本当に気持ち悪い。気にもなるし、いい年して夜中のトイレが怖いのよ。だけどね、それより何より一番気になるのはきなこへの影響よ。少なくともあと20年は元気に長生きしてほしいのに、あの気配のせいでマイスィートはストレスを溜めてる。絶叫して走り回るなんて身体の負担が心配だわ……私のきなこ……世界で一番可愛いきなこにナニしてくれてんの! そう思ったらね、腹が立って腹が立って……!」
あ、あれ……?
な、なんだか様子がおかしいぞ。
声、震えてないし、力強くなっちゃってるし……えぇ?
「幽霊だか妖怪だか超常現象だか知らないけどね、勝手に人の家に来て、愛しのきなこにストレスかけるヤツは成敗よ! 当然お父さんも同意見! で、ネットで検索して調べたの! こういう時はレーバイシ? とかいう人に頼めば良いんだって!」
母さんは拳を握って興奮状態、……や、え、まぁ、霊的に困った時は霊媒師、ってのは方法として合ってるけどさ。
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