第二十二章 霊媒師 岡村英海

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まっすぐに目を合わせ、改めて言ってみる……と。 「……もう、変な事言わないでよ。そんな真面目な顔、本当なのかしらって思うじゃない。あんまり親をからかうもんじゃないわ。大体ね、来てもらう霊媒師さんは女性なのよ」 「え? 女性? ……そんなコト、ユリちゃんも先代も何も言ってなかったのに」 どういう事だ? もしかして本来の担当者は弥生さんか水渦(みうず)さんだったのか? だけど2人の都合がつかずに急遽僕になったとか? 頭に疑問符が浮かぶ中、母さんは自分のスマホを取り出すと、表示画面を僕に向けた。 なんだろうと見てみると、そこに出ていたのは……ウチの会社のホームページ、依頼申し込みの入力フォームの控えだった。 「ほら、見てみて。霊媒師の指名があればココに記入してくださいってトコ。指名ったってねぇ、誰がどんな人かなんて分からないから、紹介文を読んだのよ。この人、”大の猫好き” って書いてあるでしょう? 猫好きなら信用できるし、きなこにも優しいかなぁって、それで決めたの」 母さんの説明を聞きながら、僕は画面に釘付けになっていた。 この紹介文は確かに僕を指している、それは間違いない。 なんだけど……貼られたリンク先がオカシなコトになっている。 霊媒師の紹介ページ、前に見たのはいつだったか。 覚えちゃいないが、その時と変わってる。 僕の名前が ”岡村英海”→ ”エイミー” に改ざんされてるんだ。 うそだろ……? なんで? どうして? って……賭けてもいい、コレやったの社長だわ。 突っ込みどころが満載すぎる。 次に社長に会った時、小一時間は突っ込もうと思うけど、まず今は先にコッチをなんとかしなくちゃ。 そう、勇気を出してココまで言ったのだ。 もう一押し、ちゃんとカミングアウトをしようと思う。 僕はカバンに手を伸ばし、中からゴソゴソ自分の名刺を取り出した。 それを1枚手にとって母さんに渡す。 「あら、新しい会社の名刺? なんて会社に勤めてるの? 仕事のコトも詳しく教えてよ、…………ん? ”株式会社おくりび”……? これ、私が頼んだ祓い屋さんと同じ名前だわ……ん? ん? ……! え!? 英海(ひでみ)! ここにあんたの名前が書いてある、【霊媒師 岡村英海】って……え? えぇ? ウソでしょ? さっき言ってたのは本当だったの? あんたの新しい仕事って……」 僕と名刺を交互に何度も、母さんは超高速で見比べている。 やっと分かってもらえたみたいだ。 最後に仕上げ、これを言えばトドメになるだろ。 「母さん、その名刺のメールアドレスのトコを良く見て。@の前、 ユーザー名が ”Amy_okamura” になってるでしょ? ”エイミー” は僕のニックネーム、会社でそう呼ばれてるの。うん、そういうコト。ホームページにあった ”大の猫好きのエイミー” 、それは僕のコトなんだ」★ 言いながら、メールアドレスをグリグリすると、母さんは目を細めながらそれを見る、そして…… 「あんた、……本当に霊媒師なの?」 信じられない……そんな気持ちが表情に現れていた。 ★ちなみに……エイミーが会社の名刺を誠から受け取ったシーンがこの辺です。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=34&preview=1
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