第二十二章 霊媒師 岡村英海

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◆ 時刻は19時過ぎ。 今、岡村家は夕飯の真っ只中だ。 少し前には父さんも帰宅したから、家族3人、揃っての食卓なのである。 今夜のメニューは、甘辛い味付けでついついご飯が進んでしまう、”豚バラとれんこんのごま油炒め” に ”ほうれん草とハムとニンニクスタミナソテー”、 ”わさび醤油の山芋の千切り” に ”とろーり溶けてるアスパラチーズ” 、それから、夏だからって身体を冷やすことなかれ……な、温野菜のたっぷりサラダだ。 うぅ……ありがたい、すごいご馳走だよ! 普段の僕は、時間があれば自炊をしてる。 一人暮らしもそこそこ長くて、わりかし色々作るけど、やっぱりさ、実家の味って馴染みが深くて懐かしくって、食べるとホッとしちゃうんだ____ ____が、しかし。 和んでばかりはいられない。 今夜の岡村家は、僕のせいで小騒ぎが起きている。 「お父さんからも言ってちょうだい! 霊媒師なんて胡散臭い仕事、すぐに辞めた方が良いって!」 温野菜を取り分けながら母さんが吠えた。 それに対して父さんは、 「いやぁ……ちょっと待ってよ。いきなりそんなコトを言われても何がなんだか分からないよ。英海(ひで)は霊媒師になったの? どうやって? だって霊感なんてないでしょう? それより今日来てくれるはずだったエイミーさんはどこ? え? もう来てる? エイミーさんの正体は英海(ひで)だった? ん? ん? んー? エイミーさんって女性でしょ……? 英海(ひで)は男の子じゃない。ん? ん? もっと分かるように説明してよ。あ、お母さん醤油とってくれる?」 ふんわりとパニックに陥っていた。 あぅ……相変わらずの両親(ふたり)だな。 昔からそうだ、チャキチャキ母さんとオットリ父さん。 何かあると先に騒ぐのは決まって母さん、父さんは騒ぐ前にじっくり考えるタイプなの。 性格は正反対なこの2人……なんだけど、共通して言えるのは、かなりの保守的、そして慎重派。 石橋は叩いて渡るどころか、陸地を大きく迂回する人達だ。 とはいえ保守的でも慎重派でも、それは決して悪い事ではない(そうする事でリスクが減るのも事実)。 ただ……そう、ただね、それゆえに僕を心配し過ぎるの。 ものすごーーーく心配性なのだ。
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