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「んもぅ! お父さんは呑気ねぇ! 英海が訳の分からない仕事を始めたのよ? 心配じゃないの? はい、お醤油!」
か、母さん、温度高めだな。
こういうのに慣れっこな父さんは、山芋に醤油をたらしてご満悦だ。
そして僕はといえば……隣で眠る大福を撫ぜながら母さんに抗議した。
「胡散臭いとか訳が分からないとか、頭ごなしに言わないでよね。そもそも、その胡散臭い霊媒師に仕事の依頼をしたのは誰? 母さん達でしょ? おかしな現象に困って、どうして良いか分からないから、調べてまでウチの会社に助けを求めたんじゃない。あとゴメン、ドレッシング取ってくれる? レモンの方、最近好きなんだ」
”ありがとね” とお礼を言いつつ受け取って、サラダにかけて一口食べればマーベラス! めっちゃおいしい!
「あら、レモンのドレッシングが好きなの? ウチに買い置きいっぱいあるから、それも一緒に送ってあげる。で、話は元に戻るけど……確かに今回、私と父さんで霊媒師さんを呼んだわ。足音コワイし、きなこも心配だし。でもね、それとこれとは話が別よ」
僕に持たせるお土産リストにドレッシングが追加され、その時ばかりは母さんも笑顔になった、……が、元に戻って今は再び渋い顔だ。
だ、だけど怯まないぞ。
「どう別なのさ」
ついつい弱気になりそうなのを、表面だけでも余裕ぶって聞いてみる。
すると母さんは、
「どうって……それは……アレよ。大事な息子に胡散臭い仕事なんかさせたくないの……こんなの、親なら誰だって思うわ。ウルサイ事言うようだけど、私もお父さんも英海が配なのよ」
そう言ってシオシオと項垂れた。
あ……それ反則。
いつもはチャキチャキ母さんなのに、こうやってショボンとされると僕は焦ってしまうんだ。
今までだって、これで何度もいろんなコトを、僕の方が折れてきた。
だけど、だけどごめんね、今回だけは折れたくないの。
「母さん、……父さんも。あのね、心配かけてごめんね。僕が悪いんだ。霊媒師になった事、もっと早く言えば良かった。びっくりしたよね、霊媒師を頼んだら息子の僕が来ちゃうんだもの」
コクコクコクコク!
僕の話に2人は激しく頷いて、ヘドバンかって勢いだ。
でも聞いてくれてる、話の腰を折ろうとはしない。
そうだよな、いつもこうだ。
心配性ではあるけれど、僕の話はぜんぶ聞いてくれるんだ。
「視えない人からしたら、霊媒師なんて胡散臭いかもしれない。でもね、信じてほしいんだ。ウチの会社は幽霊相手の仕事だし、一般的じゃあないかもしれない……けど、決して後ろ暗い事はしてないよ。正直、大変な事もある。だけどそれは、どんな仕事も一緒でしょ? 僕はね、霊媒師の仕事が気に入ってるんだ。誰かの役に立てる良い仕事だと思ってる、」
言えた、思ってるコトぜんぶ言えた。
分かってくれるだろうか?
それともまだ反対されるだろうか?
2人は顔を見合わせて、そのまま少し黙ったままで、でも。
「英海、」
先に声を発したのは父さんの方だった。
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