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父さんは、箸を置いて僕の顔をジッと見る。
そして小さく「んー」と唸って、それでそのあと、だしぬけにこう言った。
「お父さんね、おくりびさんをインターネットで見つけたの」
「あ……うん、そうなんだ」
母さんも言ってたっけ。
まぁ、そうだよね。
霊媒師の依頼なんて、ツテでも無ければそれくらいしか調べる術はないもの。
「家の中で何かが起きてる。そのせいで母さんもきなこも怯えてる。なんとかしなくちゃいけないけど、どうしていいか分からない。それで検索したんだ。検索ワードは【足音】【家の中】【誰もいない】【どうすれば?】。これで延々調べていくうち、巡り巡っておくりびさんに辿り着いたの」
さすがは親子。
岡村大海、検索大好き56才。
調べものはネットで検索、なんでもかんでもすぐ検索。
しつこいくらいのワードの入れ方、僕とまったくおんなじだ。
「正直、最初は怪しい会社じゃないかと疑ってた。お祓いなんてお寺か神社に頼んだ方が安心出来るとも思ったし。でもねぇ、よくは分からないけど……なんだかすごく気になってねぇ。だから思いきって、相談メールをしてみたの。返答はすぐに来たよ。とっても丁寧で親切で、お金の事も曖昧じゃなくハッキリ明確に書いてあった。それを読んだ時、この会社なら信用できるかもしれないって思った。それで依頼したんだ」
ユリちゃーーーん!
それユリちゃんだ!
依頼者からのメール対応、それはすべて事務担当の仕事だもの!
さすがはユリちゃん、デスクワークに依頼者応対、それに加えて結界まで張っちゃうパーフェクト事務エンジェル!(あ、キーマンさんが移ってるわ)
父さんの表情は柔らかく、頭ごなしに反対する空気はない。
この流れ、いいぞ……!
「あとね、おくりびさんの口コミレビューも感謝の言葉が多かった。どの霊媒師さんも親身になってくれるって評判だったよ。だからね、英海が霊媒師になったと聞いて驚いたけど、おくりびさんで働いてるなら…………ま、心配ではあるけれど、少しは……ねぇ。話を聞いてみたいなぁって」
そこまで話すと母さんに向き直り、「英海に話を聞いてみようよ」と言ってくれたのだ!(父さんありがとー!)
んもー!
なんでも聞いて!
なんでもぜんぶ話すから!
父さんにそこまで言われた母さんは、渋々ながらに頷いた。
ココから始まる質問タイムに僕の気合いは充分だ。
さぁぁ、カモン!
「まぁ……お父さんの言う通り、おくりびさんの対応が良かったのは確かだわ。会社としてはキチンとしてるのかもしれない。……でもね、やっぱり心配よ。霊媒師の仕事って一体どんな感じなの? こうやって依頼が入れば知らない家に行くんでしょう? それって大丈夫なの? あと幽霊。私には見えないからもっと分からないけど、危険じゃないの? どうなの?」
おっふ、いきなりその質問から来たか。
ああ、うん、危険じゃないかって?
そうねぇ………………僕の頭に中にはこれまでの現場のシーンが(生きてるけど)走馬灯のように浮かんでいた。
そうだ……そうだった。
神奈川の黒十字様の現場では24人のオタク幽霊、ピンクバンダー氏から蹴りを入れられそうになったな(水渦さんが助けてくれたけど)。
それからマジョリカさんを口寄せした時は、100体以上の悪霊達とガチで戦ったんだ(しかも弥生さんと2人だけで)。
あとはそうそうテディベアのルミちゃんもすごかった(嵐さんが助けてくれた)。
んでもってW県の修行の時は、瀬山さんのパパン、長に魂を喰われそうになったしぃ(みんなが助けてくれたけどね!)
色々あったなぁ……てへ!
でもダイジョウブ、心配しないで!
どれもこれも大したコトじゃないからさ!
なんて……絶対言えないや。
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