第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「んぁあ?(激しく声裏返る) 危険はないかって? えっと、うんと………………そ、そんなのあるはずないじゃなーい! んもー! 母さんは心配性だなぁ!」 あははははは! 僕はなんとかごまかしたくて、極力明るく笑ってみせた。 言える訳ないじゃん! そんなん言ったら反対されるに決まってるもん! 「ん…………英海のその顔、笑い方、どうも怪しいわねぇ、」 わーお! さすが母さん! 良い勘してるぅ! 伊達に30年も母親やってないね!←テンションおかしくなった。 「ヤダナモー! 怪しくなんかないよー! 深読みしすぎ! 難しく考えないで! 霊媒師ってユーレー相手の仕事だけどさ、ユーレーだって命はナイけど僕らと同じヒトだもん! 成仏していただくよう説得する、会話メインだね! そうだな、平たく言えば接客業と同じだよ! ノーーーープロブレェンムッ!!」 ヤバ!  焦る気持ちがバグを起こして最後の方はキーマンさんになっちゃった! いかん、落ち着け、これじゃあますますドツボにはまる。 僕は焦りを鎮める為に、隣で眠る大福姫を撫でまわす。 ふわふわ毛皮とひんやりボディーが心地よく、気持ちがいくらか楽になった。 「ノープロブレムって……英海なんだか変わったわね、まぁいいけど……それより、接客業と同じって本当? 霊媒師ってそんな感じなの?」 お、いいぞ、良い感じに解釈してくれたっぽい。 たぶん母さんの中のイメージは、接客業=店頭販売員=ドラッグストアの店員さんという図式が成り立ってるはずだ(おそらく、きっと、そうだよね?) 母さんは近所のドラッグストアで何年もパートをしている。 仕事内容は商品の発注、品出し、レジ、それからお客様に声をかけられれば、そのたび笑顔で接客するのだ……だからそんなイメージが湧いたのだろう。 岡村めぐみ、52才。 今ではパートリーダーだ。 「そう、まさに接客業だね。僕達霊媒師は、生きている人と亡くなってる人、その両間を取り持つの。生きてる人の大半は霊の姿が視えないし声だって聞こえない。亡くなった大事な(ひと)ともう一度話がしたい、だけど霊感がないからそれが叶わない……そんな時の為に霊媒師がいるんだよ。ね? 人の役に立つ仕事でしょう?」 話ながら、ついつい力が入ってしまう。 そんな僕の力説を、いつしか両親(ふたり)は身を乗り出して聞いている。 あ……いつの間にか空気が変わった。 父さんも母さんも(特に母さん)、表情がさっきよりも柔らかい。 分かってくれたのかな……? きっと全部じゃないだろうけど、それでも、最初に比べたら大進歩だ。 もう一押し、だろうか……? なんて事を考えて、光が見えたと僕の気持ちが上がりかけたその時だった。 リビング扉の向こうから、軋むような大きな音が聞こえたんだ。
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