第二十二章 霊媒師 岡村英海

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不穏な音は僕の耳には大音量、両親(ふたり)の耳には小音量。 霊力(ちから)の有無で、聞こえ方はまるで異なる。 ここまで違うのか……なんて、今更ながらに驚いた。 不気味な音に両親(ふたり)はソワソワ不安気で、縋る目をして僕を見る。 あ……この表情(かお)、なんだか神奈川の現場を思い出すな。 あの時、黒十字様も同じ表情(かお)をしてたっけ。 得体のしれないポ現に悩み、助けを求めてウチの会社に依頼をかけた。 父さん達も、これまでどんなに悩んだだろう。 それを思うと心が痛むよ。 もう大丈夫、僕がなんとかするからね。 …… ………… そしてもひとつ、あわよくば。 ココで両親(ふたり)を助けてさ、霊媒師(しごと)のコトを認めてもらえば一石二鳥になるんじゃない? 反対されても辞めるつもりはないけれど、出来る事なら認めてほしい。 だって両親(ふたり)は僕の大事な家族だもん。 よし、認めてもらう為にも頑張らなくちゃ。 まずは音の主の正体を探るんだ。 慌てず騒がず落ち着き払って。 僕は余裕の笑顔でもって、父さん達に言ったんだ。 「2人はココにいて。僕が様子を視てくるよ」 キ、キマッタか? 頼れる息子、頼れる霊媒師、そんな感じを狙ってみたけどどうだろう? そんな僕に、いち早く反応したのは、目をキラキラさせる母さんだ。 「英海……あんた変わったわね。なんだか昔より逞しくなったみたい」 そ、そう? 予想以上の反応に、挙動が不審でアワアワしてたら、父さんが更なる追い打ちをかけてきた。 「うん、確かに変わったね。頼れる男の顔付きだ」 や、や、やだ! 2人とも言い過ぎ! 狙ったクセに、こんなん言われてどうして良いか分からなくって、「ちょ、えっと、そんなコトは、」とテンパッていた時だった。 「ふんぎゃーーーーっ!!」 突如、岡村家のスーパーアイドル、きなこの絶叫が聞こえてきたの。 その直後、 ズドドドドドドドドドドドーーーーッ!! 2階から階段を駆け下りる音がして……と思った数瞬後、 ドカーーーーンッ!! リビングドアの一枚板、その下の方に取り付けられた ”きなこ専用出入口” の アクリル板が吹っ飛ぶくらいの勢いで、きなこお嬢様が転がり込んできたのだ。
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