第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「「「 きなこーーーー! 」」」 親子3人、息がピッタリ重なった! そりゃそーだ。 きなこと言えば岡村家のスーパーアイドル兼、天使兼、妖精兼のお嬢様。 仔猫の頃から穏やかで、撫でまわされても ”フー!” も ”シャー!” も無く、誰かをツメで引っ搔いたコトも無い、のんびりした猫なのだ。 そんなきなこのこの荒ぶり、焦った様子でダッシュでリビング(ここ)まで来るなんて、お嬢が怯える謎の霊とは一体どんなヤツなんだ。 荒ぶるきなこはダッシュの途中で僕に気が付き、 「ほなななっ!」※訳:まだいた! と鳴いて、シュタタとこちらにまっしぐら。 お正月に会った以来の再会に(今まできなこは2階で寝てた)、こんな時でも甘えに来るとかもう……きゃー! きなこカワイイー! ダイスキー! 当然僕は、両手を広げてお嬢のダイブを待っていたのだが…… シュタタタタタター!(僕に向かって走ってる) ↓ ンン? ハッ!(何かに気が付いた) ↓ キキィィー!(肉球ブレーキ音) ↓ ピタッ!(僕の手前数十センチで停止) ↓ …………(黒目真ん丸でフリーズ中) …… ………… きなこはダイブしなかった。 お日様色の茶トラの猫は、年を取ってもふわっふわな艶の毛を、これでもかと逆立てて、本来岡村家にいるはずのない、自分以外の猫を前に固まった。 えっと……この反応。 もしかしてきなこは大福が視えるのか? ふと湧いた疑問だったが、すぐに確信へと変わる。 きなこよりもっと年上、どシニアの猫又がユラリとアンヨを一歩前に、生きてる猫に近付いた。 とその時、きなこはよほどビックリしたのか、ピョーンとその場で垂直に飛び、着地と同時に再び固まる。 大福はそんなきなこに構う事無くズンズン近付き、ちっちゃなお鼻をスンスンさせて、同じくちっちゃなきなこの鼻にくっつけた。 ハ、ハナチュー!(猫同士のご挨拶ぅ!) 続けて数回ハナチューをして、その後は互いの匂いをスンスン嗅いで、終わる頃にはきなこの緊張はすっかり解けていた。 や、やだぁん! 僕の可愛い2匹の猫が仲良しになっちゃった! こんなに嬉しいコトってないよ! どっちも大好きマイエンジェル! どちらかなんて選べない、両ニャン同じくらい好きなんだ! ……ハッ! あぁ……そうか、こういうコトだったのか……! 僕はこの瞬間、ジャッキーさんを深く深く理解した。 弥生さんとマジョリカさん、どっちも大好き同じくらい。 そりゃあ選べる訳ないっすわっ!
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