第二十二章 霊媒師 岡村英海

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僕の両手の右は大福、左はきなこ。 ちっちゃい頭をナデナデしながら夢心地に浸っていると、 「ちょっと英海! あんたナニ1人でニヤニヤしてるのよぉ!」 「英海(ひで)どうした! やっぱり怖くなっちゃったのか!?」 ここで現実に戻された。 あ、いけね。 カワイイ猫ランキング同率1位のラブリーにゃんこ達に、すっかり夢中になってたよ。 テンパる両親(ふたり)に謝って、改めて大福に寄り添うきなこを見た。 なるほどね、合点がいった。 お嬢は霊力(ちから)持ちの猫なんだ(12才だしそろそろ猫又化する頃か?)。 謎の不穏な音がして、激しく荒ぶりダッシュをするのは霊の姿が視えるから。 きなこは結構人見知りだし、お客さんでも来ようものなら、秒で2階に逃げてしまう。 なのにさ、知らない霊が家の中をウロウロしてたら、そりゃあ怖くて逃げちゃうよ。 それと、もしかしたら音も大きく聞こえてるのかも。 ただでさえ猫は耳が良い、聞き取る力は人間の3倍だ。 僕にもウルサク感じたあの音だ、猫にしたら恐怖を感じるレベルだろう。 これはきなこの為にも早急に対応しなければ。 「父さん、母さん。きなこを見てて。僕ちょっと向こうを視てくるから」 言いながらドアに向かって歩き出すと、大福が弾むように着いてくる。 きなこは「ほな……」とか細い鳴き声で、だけど動けず僕らを見送る。 そんなきなこを母さんが抱き上げた。 守るようにギュッと胸に、きなこもしがみ付いている。 父さんは、僕の肩をグイと掴むとこう言った。 「英海(ひで)……本当に大丈夫かい? ウチにいる幽霊がもし悪い人だったら……危ないんじゃないのかい? 心配だから父さんも行くよ」 あ……も……参ったな、そんなコト言わないでよ。 本当はコワイくせに、それでも一緒に行くだなんて……ああ……親ってありがたいな。 「ダイジョウブだよ。安心して、悪い霊なんてめったにいないんだ。この家にいる霊もギシギシうるさくしてるだけ。僕、幽霊に会ってお願いしてくるよ。ウチの両親と猫が困ってます、この家から出て行ってくださいって。……ああもう大丈夫! そんな顔しないで! 言ったでしょう? 霊媒師の仕事は会話メインだって。危険な事なんかないから」
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