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そう言って、ニッコリ笑って僕の肩から父さんの手を離した。
そう、大丈夫だ。
実家で起きてる現象、それはただのポ現だもの。
確かに音はウルサイけど、まだ霊の姿は視てないけど、それだって大した問題じゃない。
怖くないよ、本当にね。
だってさ、ココよりもっとヘビーな現場もあったんだ。
100体以上の悪霊達と戦ったり、巨大なテディベアにも襲われた。
それから長、瀬山さんのパパンとかマジで洒落になんないから。
アレらに比べりゃポ現くらいは余裕っす!
「じゃあ、僕が帰ってくるまでリビングから出ないでね、」
ドアに手をかけ振り向きざまにそう言うと、両親と1匹、コクコクと頷いた。
さてと、じゃあ行きますか。
大福と目を合わせてから前を向き、ドアノブを捻る。
____ガチャ、
ドアを開け、見慣れた廊下が視界に入ったその瞬間、
「なんだこりゃーーー!?」
脊髄反射で叫んでしまった!
アイター!
久しぶりにやっちまったよ!
霊媒師が依頼者の前で叫ぶとかマジでダメじゃーん!
案の定、父さん達は僕の叫びに動揺しちゃって、ガクブルしながら一斉に喋り出す。
「なに!? どうしたの!? 英海ダイジョウブ!?」
「英海! どうした! 危なかったら戻ってきなさい!」
「ふんぎゃーーーっ!」
こりゃイカン、すこぶるパニックどうにかしないと。
僕はマッハで振り返り、これでもかと目一杯口角を上げた。
「な、なーんちゃってー! 今のは冗談! 2人をビックリさせようと思ったの。ごめんね、怖かった?」
冗談だったと笑って言えば、両親は一応信じてくれた(ただし、かなりブーブー言われたけどね)。
……
…………
「じゃあ今度こそ視てくるから、」
へなっと笑って手を振って、“ちょっとコンビニ行ってくる” 、そんなラフさで廊下に出る……と。
あー、うん。
やっぱりいるわ。
視間違いじゃなかったよ。
僕は、“はぁぁ”と深いため息をつき、ジワッと汗を滲ませた。
同時、頭の中に先代の言葉が蘇る。
____どんな現場でも驚かないで、
____怯まないで頑張ってきてね、
____岡村君はもう新人じゃない、
____立派なプロの霊媒師だ、ファイトー!
そうだ、僕はもう新人じゃない。
どんな現場でもベストを尽くすんだ。
とりあえず……腕を後ろに、リビングドアをしっかりと閉めた。
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