第二十二章 霊媒師 岡村英海

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参ったな……今日は僕のソロデビュー、助けてくれる先輩方はココにはいない。 最初から最後まで、そう、すべて僕だけでなんとかしなくちゃいけないんだ。 出来れば穏便に済ませたい。 滅するんじゃなくてさ、話をきいてさ、納得して成仏してくれるのがベストだんだけど……妖怪に人の言葉は通じるんだろうか……? 僕はその時、マジョリカさんの現場で滅した異形のコトを思い出していた。 全身ブツブツ、霊体中(からだじゅう)に巨峰のような丸いモノを付着させ、声は出すけど『うぁぁぁああ……』しか言わないし、人の言葉を理解してる感じではなかった。 どうしよ……アレと同じタイプだったら。 カタコトでも良い、せめて簡単な意思疎通が出来れば……淡い期待を胸に抱き、試しに話かけてみるコトにした。 緊張するな、なんて話しかけようか……ん……まずは無難な線でいってみるか。 「あ、あの、……僕はこの家の息子で岡村英海と申します、」 とりあえずの自己紹介だ。 初対面だし、もし話が通じるようなら、なぜ岡村家に来たのか、なぜ大きな音を出すのか、なぜきなこを脅かすのか、その辺を聞き出したいと思ってる。 その為には最初から喧嘩腰ではダメだ。 話し合いを望むなら、相手が生者でも死者でも異形でも、まずは信頼関係を結ぶ必要がある。 だからこその自己紹介だ。 そちらが攻撃してこなければ、こちらも攻撃しませんよ、という意思表示でもあるのだが……通じただろうか……? 僕は顔をうんと上げ、斑模様の顔らしきに視線を飛ばす。 目鼻がないから表情を読む事は難しい。 僕の言葉が届いているのか、それすらも分からない。 しばらく黙って出方を伺う……が、斑模様はただそこにいるだけで、僕に攻撃はおろか、ほぼほぼ動こうともしなかった。 「……………………」 『……………………』 うぅ……沈黙が長いな。 僕からもう1度声をかけてみようか。 ただ、声をかけた所で人の言葉が通じるのか否か、それさえも分からないから、もしかしたら、まったく意味がないかもしれない。 だけどこうして、なにもしないでいても解決には向かわない。 ん……こういう時、みんなならどうするだろう?
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