2366人が本棚に入れています
本棚に追加
なんと言うか……大福の様子がおかしい。
いつもなら僕の隣で『うなん』と鳴いて、キュートにまとわりついてくる。
なのにこんな、壁の中に隠れるなんて(顔は出てるけど)、この仔の性格上、考えにくいコトなのだ。
一体どうしたんだろう?
大福は、壁から頭を生やした姿で、チラリチラリと上を向く……が、僕を視てるというよりは、その先の斑模様を視ているようだった。
ん? お姫は斑が気になるの?
そんな隅っこで(隅っこどころじゃないけど)、隠れるように身を潜めるのは、もしや斑が原因なのか?
まさか……怖がってるのかな……?
いやいやいや、それはないだろう。
だって姫は長にだって一歩も退かずに立ち向かい、僕を守ってくれたんだ。
目の前の斑模様は、確かに霊体はデカイけど、長より怖いはずがない。
じゃあどういう事……?
考えても答えは出なくて、頭の中で疑問符を量産している時だった。
ダンマリ石化の斑模様が、なにやら呻き出したんだ。
『……キィ……キ…………キィ…………』
斑模様は言葉とは言えないような音を出し、ついでに息も吐き出したのだか、それがとてつもなくクサかった。
「うっ、生臭い、」
たまらず顔を横に向け、この臭いから逃れようとした……刹那。
ギシッ!!!
床が軋む大きな音がした。
その半瞬後、斑模様はデカイ霊体に似合わぬ動きで、一瞬で間合いを詰めて来た。
「……!?」
声さえ出ない驚きの中、とっさに霊矢の印を結ぶも、とてもじゃないが間に合わない、マズイ……!!
せめてもと身をすくめ攻撃に備えた……が、斑は僕をスルーした。
え? と斜めに振り向いて、目線で巨体を追った先____
『ななっ!!』
大福の慌てた声。
斑は姫に突進し、そのまま一緒に壁の中に消えた。
最初のコメントを投稿しよう!