第二十二章 霊媒師 岡村英海

30/159
前へ
/2550ページ
次へ
なんと言うか……大福の様子がおかしい。 いつもなら僕の隣で『うなん』と鳴いて、キュートにまとわりついてくる。 なのにこんな、壁の中に隠れるなんて(顔は出てるけど)、この仔の性格上、考えにくいコトなのだ。 一体どうしたんだろう? 大福は、壁から頭を生やした姿で、チラリチラリと上を向く……が、僕を視てるというよりは、その先の斑模様を視ているようだった。 ん? お姫は斑が気になるの? そんな隅っこで(隅っこどころじゃないけど)、隠れるように身を潜めるのは、もしや(あいつ)が原因なのか? まさか……怖がってるのかな……? いやいやいや、それはないだろう。 だって姫は(おさ)にだって一歩も退かずに立ち向かい、僕を守ってくれたんだ。 目の前の斑模様は、確かに霊体(からだ)はデカイけど、(おさ)より怖いはずがない。 じゃあどういう事……? 考えても答えは出なくて、頭の中で疑問符を量産している時だった。 ダンマリ石化の斑模様が、なにやら呻き出したんだ。 『……キィ……キ…………キィ…………』 斑模様は言葉とは言えないような音を出し、ついでに息も吐き出したのだか、それがとてつもなくクサかった。 「うっ、生臭い、」 たまらず顔を横に向け、この臭いから逃れようとした……刹那。 ギシッ!!! 床が軋む大きな音がした。 その半瞬後、斑模様はデカイ霊体(からだ)に似合わぬ動きで、一瞬で間合いを詰めて来た。 「……!?」 声さえ出ない驚きの中、とっさに霊矢の印を結ぶも、とてもじゃないが間に合わない、マズイ……!! せめてもと身をすくめ攻撃に備えた……が、斑は僕をスルーした。 え? と斜めに振り向いて、目線で巨体を追った先____ 『ななっ!!』 大福の慌てた声。 斑は姫に突進し、そのまま一緒に壁の中に消えた。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加