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『お父……さん……ごめ……んなさい』
『貴子、いいんだ、おまえは謝るな、違うんだ、俺がみんな悪いんだ。あの時、おまえが東京に行く前の晩、俺がちゃんとおまえの話を聞いていれば、おまえの気持ちをわかろうとしていれば……みんな俺が悪いんだ』
『違うっ! お父、さんが、悪いんじゃないの! わた、私が、お父さんに嘘ついたから、だから、』
『いいや、貴子は悪くねぇ。俺が貴子に嘘をつかせたんだ。情けねぇ親父だよ。娘がいなくなるのが嫌でよ、娘の希望よりテメェが寂しくなるのが辛くてよ、貴子を縛りつけようとしてたんだ』
『それでも、や、やっぱり私が、悪いよ』
『貴子……おまえは優しい子だ。東京に行った後もそうやって自分を責めて、自分だけでなんとかしようって頑張っちまったんだよな。昔から……小せぇ頃からそうだった。意外と頑固でよぉ……そんなとこは俺に似ちまったんだよな』
『私が悪かったんだもの、頑張るのは当たり前だよ、』
『違う、違うんだ。……俺がよ、意地にならずによ、貴子に戻って来いと言えていれば……もっと母さんの話を聞いてやれば……そうすれば貴子はユリを連れて家に逃げて来る事がで出来たんだ……貴子が殺される事もなかったんだ。みんな俺の責任だ、俺が悪かったんだ……本当に……本当に……馬鹿な父親で申し訳ねぇ! もっと俺がしっかりしてりゃあよぉ……今も貴子は生きていたし、ユリが独りぼっちになる事もなかったんだ! 貴子! 許してくれ! 俺は……俺は……オレは……あぁぁぁぁぁ!』
悲痛な叫びが部屋に響き、その声の主は床に崩れ落ちた。
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