第二十二章 霊媒師 岡村英海

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ゴクリと喉が鳴る。 額と背中に汗が流れて、頭の中では疑問符がかつてない豪速で飛び交っている。 「えっと…………なんで、ウチュウ?」 開いた口がふさがらない、まったく意味が分からない。 僕はただ、愛しのお姫を探したくって、その為に霊視のスキルをなんとしてでも発動させたく気合いを入れただけなんだ。 なのに……猫なんてどこにもいない宇宙の真ん中、ココで僕は独りきり。 「あー、うん(キョロキョロ)。何度視ても宇宙だわ」 とりあえず現状を整理しなくちゃ。 ビックリしすぎて逆に頭が冷えてるうちに、なんでいきなり宇宙に来たのか、その理由を探るんだ。 てかでも変だよな……息が出来る、呼吸になんの支障がない(宇宙なのに?) でもって無重力のはずなのに、身体が浮いたりしないんだ(だから宇宙なのに?) 更に言えば宇宙服も着てないし、普段のスーツのまんまだし、地球にいるのと感覚的にはまったく一緒で、それを思うとホントにココは宇宙なの? って疑わしくなってくるし、じゃあどこなんだって言われると答えはぜんぜん浮かんでこない………………ただ、この状況に似た話を、前に聞いた事があるんだよ。 その話をしてくれたのはジャッキーさんだ。 彼は言っていた。 昔、廃ビルで悪霊達に襲われて、命が尽きて光る道に乗ったんだって。 その時、道は宇宙に架けられて、輝く星に囲まれながら一気に走って黄泉まで逝ったと。 まさか……まさかとは思うけど、僕、知らない間に死んじゃったとか……はは……はははは……言わないよねぇ?  実は斑に襲われて、命が尽きて死者になってて、だけど僕は死んだ事に気付いてない……というパターンじゃありませんようにと祈りつつ、気を落ち着かせる為、せっかくだからと綺麗な宇宙(そら)に目を向けた。 …… …………その時だった。 前方数メートル先。 そこに視たのは金色(こんじき)にキラキラ眩く……道を視たんだ。 あれはもしかして…………【光る道】ではないだろうか? 黄泉の国から善の死者に伸ばされる、あの道なのでは…………って、やっぱりそうだ。 地上からなら視た事があるもの、あの色、あの輝き、【光る道】で間違いない。 という事は……まさか……道は僕を迎えに来たのか?  やっぱり僕は死んだのか……!? 
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