第二十二章 霊媒師 岡村英海

38/159
前へ
/2550ページ
次へ
この時またもや、前に聞いた先輩霊媒師の言葉が頭に浮かんだ。 今度はジャッキーさんじゃない、水渦(みうず)さんが言ってたコトだ。 あれは春。 おくりび事務所にいた日でさ、ユリちゃんが社長に「わ、わ、私と結婚するんだから!」と告白をすっ飛ばしてプロポーズをしちゃった、あの日の事だ。  会社の庭で話す2人を僕と水渦(みうず)さんで霊視した時に(覗いたとも言う)言っていたのが…… ____それから注意してください、 ____岡村さんの目に壁は見えていないでしょうが、 ____実際には存在します、 ____私達は変わらず事務所内にいますので、 ____庭だと思って突進すると、 ____壁にぶつかりケガをします、 これだ。 そうだよ……人の恋路を覗いたあの日、僕の目には居たはずの事務所が消えて、代わり、外の景色が映ってた。 まるで本当に外にいる、そう思うくらいリアルだったんだ。 い、いかん……頭がこんがらがってきた。 落ち着け僕、そして考えろ。 もしかして……もしかしてさ、霊視……発動してるんじゃないか? 僕は手探りで身体の下のフカフカを撫ぜまわす。 やっぱり布団の感触だ……これはもう、結論が出てるじゃないか。 果てなく広がる宇宙は今、僕が霊視で視てるんだ(それにしたってなんで宇宙?)。 本当のココは6畳の僕の部屋、さっき部屋を散らかしたから、その何かにつまずきシングルベットに倒れたの。 きっとそうだ、その証拠に……僕は霊視を解除した。 簡単な言霊。 それを小さく唱えた途端……やっぱりだ! 輝く星が徐々に消え、近くに視えてた【光る道】も……あ、誰か知らない(ひと)が楽しそうに歩いてる、ははは……アレ、僕の道じゃなかったわ。 それから数秒。 フェードアウトに宇宙が消えて、入れ替わるフェードインで現れたのは……見慣れた僕の部屋だった。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加