第二十二章 霊媒師 岡村英海

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とりあえず霊視は出来た、ただし遠いし猫捜しに宇宙だなんて見当違いもはなはだしい。 クソ……! 霊視さえまともに出来りゃあ、状況は一気に変わるというのに、これじゃあ大福は視つからない。 どうするか……霊視は諦めて家の中を肉眼のみで探すか、それとももう一回だけ霊視を試すか……悩むな、でもグズグズはしてられないぞ。 こうしてる間にも、大福がどんな目に遭ってるか……あ……嫌だな、へんなイメージ湧いてきちゃった。 縁起でもない、悪い方に考えすぎるのはよそう。 それよりも、霊視と肉眼、どっちにするか決めなくちゃ。 もし霊視をするなら、さっきみたいな失敗はしちゃダメだ。 それこそ、成功イメージを頭に浮かべるのが大事で。 そういえば瀬山さんが言ってたな。 ____キミはどうしたいの!? ____イメージして! ____それを具現化するんだよ! さっきだってイメージはしたさ。 大福を視つけたい、助けたいって。 でも視えるのは宇宙だけ、想う気持ちが足らないのか、それとも僕がダメダメなのか……分からないけど、……うん、でもやっぱりもう一回だけ、すっごい気合いの入ったイメージでリトライしよう(これでダメなら諦める)。 …… ………… 脳内で……抱っこのお姫を床に降ろした。 途端、弾むように走り出す大福。 まんまるオシリが綿帽子を思わせて、お得な三尾もフリンフリン。 僕はその後ろを全力で追いかけた。 どこまで行っても果てのない白い空間。 油断をすれば真白な猫を視失う。 そうならないよう、僕は目を凝らして後を追う。 延々走っているうちに、白いだけの空間が一転、同じく果てない宇宙に変わった、……また宇宙かよ。 やっぱりダメか……と挫けそうになったけど、脳内の大福はまだまだ前を走ってる。 霊視で視ている映像と、脳内のイメージがフラッシュみたいに途切れ途切れに重なって、ダメで元々、僕はそのままお姫の後を追いかけた。 「大福、待って!」 ____うなぁん! カ、カワイイ! まるくてフカフカ。 後ろ姿はほとんど毬で、頭にちょこんと三角耳がついている。 その耳は、僕が呼ぶたびピョコっと小さく動くんだ。 ああ……なんてラブリー、なんてキュート、なんて愛しい存在なんだ……! 涙が出てくる、生死を超えて出逢えた奇跡。 今あの仔を視つけなければ二度と逢えないかもしれない。 そんなの……そんなの……絶対に嫌だっ! 思った途端に涙腺決壊。 涙がダクダク流れだしたその時、 ____うな、 前を走る大福が止まった。
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