第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「いたーーー! 大福! 良かった! 視つけたーーー!」 心の底からホッとした。 斑に姫がさらわれてから生きた心地がしなかった。 いなくなって不安になって、もしこのまま逢えなくなったらどうしようと、途中でガチ泣きしたくらい。 やっと視つけた! 本物の、僕の大事な愛しい猫又…………!  …… ………… ………………と、そのオトモダチ、 ん? んん? んんんーーーー? 猫が、……増えてる。 僕の知らない猫がいる。 な、なんで? んんー? 開けたドアの部屋の中。 大福は壁の中でも天井でもなく、ベッドの上で横になっていた(これなら霊視いらなかったな)。 いつもキュルンでキラキラの、可愛いおめめを半開きにして、桜色がデフォルトの、ちっちゃなお鼻にシワを寄せて。 四肢を伸ばしてダランとゆるく動かない、てか動けないっぽい。 そう、…………大福は知らない猫(オトモダチ)にされるがままになっていた。 オトモダチはお姫に抱きつき、白い毛皮をしつこいくらいに毛繕い。 目を閉じてザリーンザリーンと舐め続け、時々、カプカプカプと甘噛みし、嬉々としながらまた舐める。 猫同士の毛繕い……これはまさしく親愛の証だ。 この仔はお姫が好きなのかしら……って、好きなんだろうな、そうでなければこんなにザリザリしないよな。 ただ、毛繕いはあんまり上手じゃないみたい。 毛並みを無視して好きなように舐めるから、姫の毛皮はヨダレでしっとり逆立っちゃって、とんでもなくグチャグチャだ(それでも可愛いけど)。 「あ、あのー、お取込み中すみません。大福さん、ちょっと質問いいですかね?」 待っていても終わりそうにない……そう判断した僕は、横になる猫又に声をかけた。
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