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聞きたいコトと言いたいコトがたくさんある。
斑に突然さらわれて、怖い思いをしたであろう大福……本当にごめんね。
僕がもっとしっかりしてたら、こんな事にはならなかった。
今回ぜんぶ僕が悪いよ。
そもそも、なんでお姫はさらわれたんだろう?
あの時斑は、僕の横をすり抜けて迷わず姫に向かってた。
間違いない、あれは完全な大福狙いだ。
そうかと思うとさらった斑は今はいなくて、さらわれた大福も、怯えた様子を視せるコトなく、呑気にベッドで横になる。
ご無事でなにより、それは当然思ってる、……けど、だけどさ、それ差し引いても、分からないコトばっかりだ。
頭の中は疑問符の雨あられ、聞きたいコトは盛りだくさん。
なんだけど……それらの疑問を上回る、もっと大きな疑問があって、それは……
「えっとー、大福さん。つかぬ事を聞くようだけど、そこの猫ちゃんは、どこの仔なの?」
直球で聞いてみた。
そりゃそうだ、気になるよ。
だってさ、実家の猫はきなこ1匹、それ以外にはいないはずだし、新しい猫をお迎えしたなら、両親から百の単位で写真が来るに決まってる(でもなかった)。
僕の問いに大福は、『うな……うなぁ?』と曖昧だ。
答える気がないのだろうか?
それとも、本当に知らない迷い猫なのだろうか?
2匹の猫はベッドの上でぴったりくっつきゴロンとなってる。
オトモダチは相も変わらず、毛並みを無視した毛繕いに熱心だ。
ぷっ、大福、エライコトになってるな。
全身の毛が逆立って、斬新すぎるスタイルだ。
……
…………
………………この仔、
最初はさ、生きてる猫なのだろうと思った。
でも、違うかもしれない。
大福は三尾の猫又。
ゴージャスボディは霊体だけど、強い妖力を発動させれば、生きた者に自分の姿を視せる事も、物理干渉も出来る。
相手が死者だろうが生者だろうが、ふれあう事が可能になるのだ。
ただ、大福はむやみやたらに妖力を使う子じゃない。
下手に使って混乱を招いたら、僕が大変になると知っているからだ。
それなのに、このオトモダチは毛繕いをしているのだ。
嬉々として、楽しそうに嬉しそうに。
じゃあ、なんらかの理由で妖力を発動したのかなって、僕はそう考えた。
でも、やっぱり違う。
だって、妖力を使えばふれあう事は可能になるけど、霊体の温度は変えられないの。
霊体は氷のように冷たくて、さわればびっくりしちゃうくらい。
この仔が生きた猫だとしたら、冷たいお姫にくっつくなんて出来ないよ。
猫、寒いのキライだし。
それが視てみろ、
ザリーンザリーン
間違いない、この仔は命のない猫だ。
そうだとすると、さらに気になる事がある。
うっとりと目をつむり、お姫の毛皮をしつこいくらいに繕う猫は、独特の毛色だった。
黒地の毛皮に柿に似ている橙色が霊体全体飛び飛びに配置され、時々小さく白が混じる。
ランダムすぎるその柄は、迷彩服を思わせて同じ模様は2匹といない。
性格は温厚で、やんちゃで懐こく優しい子が多いと言われる……この仔はいわゆる ”サビ猫” だ。
ダークな暗色、黒に橙、そして少々白が混ざった、そう、斑模様の猫なのだ。
この柄、さっきの斑に似てないか?
否、似てるどころかそっくりだ。
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