第二十二章 霊媒師 岡村英海

44/159
前へ
/2550ページ
次へ
「……………………この仔がさっきの ”斑” だったりして、」 思わず口にする……が、まさかね。 確かに模様は似てるけど、大きさが全然違うよ。 推定身長2メートル。 巨大な斑は2足歩行のおすもう体型。 対しこの仔は、推定身長……は、分かんないけど(猫背だし)、体重を推定するなら3キロから3.5キロといったところか(大福より一回り小さい)。 年は若そうだな。 毛艶もいいし、ちっちゃい歯がたまにチラリと視えるけど、それがまだまだ白くてツヤツヤ、2才前後の仔猫だろう。 てか……可愛いなぁ。 サビ色毛皮はやや長め、フワンフワンでパヤパヤしてる。 顔を埋めたら幸せメーター振り切りそうだ。 フワンフワンが(サビ)ふわっふわに(姫)くっついて……尊ーーーーい! と、とりあえず……この仔を抱っこしてみたい!  目の前の可愛い猫に気持ち掴まれココロは踊る。 あ、でも一番好きなのは大福だからね(浮気者の発言みたいだな)。 「そっと、そーっと」 ちょっとでも嫌そうならすぐに退く。 怒ったり怖がったりも同様だ____岡村家家訓、猫を尊重せよ。 ステップ(ワン)、僕とサビは初対面。 まず、最初にすべきはご挨拶だ。 というコトで、人差し指をサビの鼻にゆっくりと近づけた。 怖がるかなって思ったけれど、それは杞憂に終わってくれて、サビは『ン?』と顔をあげ、僕の匂いをスンスン嗅いで、それで……それから……コツン。 サビ猫の鼻←→僕の指(コツン よっしゃ! ご挨拶クリアー! 次ぃぃぃ! ステップ(ツー)は力を抜いた手のひらを、サビの前でヒラヒラ視せて「怖くないヨ」とアッピール。 それを視たサビ猫は、怖がるどころか手のひらに頭突きをしてくれ、ちっちゃな頭が手の中に納まった。 チャンス到来! 歓喜の声を喉で飲みこみ、平静さを装いつつの……頭撫ぜ撫ぜだっ! サビ猫の頭←僕の手(ナゼナゼ 撫ぜ撫ぜクリアーー! ネクストォォォ!(仕事忘れそう) いける、これはいけるぞ……! ステップ(スリー)は上級編。 寝ころぶサビの脇の下、そこに手を入れ抱き上げるんだ。 くれぐれも様子を視ながら、ちょっとでも怖がるようなら、すぐにベッドに降ろす所存。 サビ猫の脇の下←僕の両手をイン(冷たっ!) 『へにゃぁ?』 わぁ! 鳴き声カワイイ! でもって ”へにゃぁ” って弱そう! サビ猫はされるがままだった。 特に怖がる様子も視せず、僕の手により大福から剥がされた。 そしてそのまま宙に浮かんでダラリと霊体(からだ)を伸ばしてる。 ふふふ、そうそう。 猫ってさ、意外と長さがあるのよね。 座っていると分からないけど(ま、寝てても分からないけど)、脇で持ち上げぷらんとさせると、にゅーんとカラダが伸びに伸び、「えっ!? 猫ってこんなに長かったの!?」と驚いちゃうの。 ユーレー猫のこの仔もおんなじ。 にゅーんと胴が伸びちゃって、後ろのアンヨも伸びちゃって、視た感じ、2倍3倍引き伸ばされて、……って、ありゃりゃ、そんなモンじゃきかないな。 もっとだよ、4倍5倍、6倍7倍、……え? ちょ、うそでしょ? まだ? まだ伸びるの? 「え、え、え、えぇぇぇぇぇぇぇ!?」 僕の身長は175センチ。 その僕が両手を上げて抱いてる猫は、伸びに伸びて伸びまくり、天井に頭が届きそうな勢いだ。 頭は天井、アンヨは床に。 今、この仔は推定全長2メートルはありそうで……
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加