第二十二章 霊媒師 岡村英海

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…………………………、 …………?  ………………………………ぅ、ぅ、う、うわぁぁぁぁぁぁ!! ビックリしすぎて逆にのんびりしちゃったよ! そうだよね、僕、今、サビ猫(巨大バージョン)に食べられちゃってるよね!? パクッて! 頭からパクッてぇぇぇぇ!! なっ!? なんで!? この仔はヒトクイ猫なの!? ”ささみ” でも ”ちゅるー” でもなくヒトを食べちゃう幽霊猫なの!? ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ!! 他のヒトならいざ知らず、僕のスキルは霊との物理干渉で(ry とにかく! このままじゃ食べられちゃう! サビのゴハンになっちゃうよ! 出なくちゃ、サビの口から脱出しなくちゃ! とりあえずは出来る事から、そう思って暴れてみた。 両手両足バタバタさせて、口から出ようとしたんだけど…………クソッ! 出られない、斑の口は少しの隙間があるだけで、貝のように閉じている。 巨大化した幽霊猫(斑)の口の中……という特殊すぎる環境は、僕の視界を丸々と奪っていた。 ついでに言うなら音もすこぶる聞こえづらい、……にも関わらず小さな音で聞こえてきたのが、 『に゛ゃっ!! に゛ゃっ!!』 大福の声だった。 ああ……まただ、あの仔はまた、僕を助けようとしてるんだ。 それに気付いたのと同時。 頭の中に、白い毛皮がチリチリ焼けた大福の姿が浮んだ。 W県の修行の時だ、(おさ)から僕を助ける為に、あの子はいくつも火傷を負った。 毛皮だけじゃない、地肌まで焼けてしまって赤黒くなっていたじゃないか。 駄目だ……早く(ここ)から脱出しないと、姫がまた無茶をする! 僕は頭を食べられたまま、さっきよりもっともっと暴れたんだ。 どうにかして(ここ)から出ようと必死になった。 めちゃくちゃに振り上げる手と足が、斑の霊体(からだ)に何発かヒットした。 頼む……口を開けてくれ……! 切に願ったその直後、斑模様の大きな口は…… はむはむはむはむ、 僕の首とか頭とか、唇だけで甘噛むみたいに ”はむはむ” し出した。 こ、これはチャンス! はむはむするたび小さくだけど、口が開いたり閉じたりしてる! これでなんとか脱出しようと、タイミングを見計らう……が、開くと言ってもぱかーんと大きく開くでなし、無理に出れば猫の歯で怪我をする。 ああ……やっぱりダメがと落胆したが、ここでひとつひらめいた。 どうして忘れてたんだ、猫の口を簡単に開かせる方法があるじゃないか! 僕は両手を高く上げ、手探りで、斑の口の両端に手を添えた。 そしてそのまま躊躇う事なく、思いっきり力を……込める! グッッ!!←斑の口角を両手で力一杯押した。 すると…………ぱっかーん! よっしゃ開いた!! このまましゃがめ!! 脱出成功っ!! やった……出れた、焦った、めっちゃ焦った。 ああ…………覚えてて良かったよ。 さっきのは、嫌がる猫にクスリを飲ませる方法だ。 風邪をひいた猫を抱いて、口角を左右同時に押してあげれば簡単に開くのよね。
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