2366人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ……ヨダレでベタベタだ」
頭と顔に手をやると、滴る程に濡れている。
そしてほんのりナマグサイ。
今の僕はオサカナ臭をプンプンさせて……いるんだけど、不思議なもので、さっきまではクサクてイヤだなと思っていたのに、匂いの主が猫だと分かれば気にならなくなるんだよ(すごくなーい?)。
この魚臭はそれだけゴハンを食べてる証拠、ヨシ! エライぞ! 良い子だねぇ! たんとお食べ! とまぁ、岡村家全員が持つ(3人だけど)”猫溺愛スキル” が発動されるのだ。
僕を放したサビ猫(巨大バージョン)は、後ろ足で直立したままキョトンと首を傾げてる。
ん……襲ってくる気は……なさそうだ。
だとしたら、さっきのは一体なんだったんだ?
僕を食べるつもりなら、バリボリ噛んでもおかしくないのに、サビがしたのは甘噛みだけだ。
改めて頭と顔をさわってみたが、負傷ヶ所はどこにもない。
ただひたすらにベタベタしているだけなのだ(ヨダレで)。
サビの真意が分からない……なので直接聞いてみようと口を開けかけた時だった。
ザンッ!
荒ぶるお姫がサビに飛びつき、その首元をガブガブと噛みだした。
『に゛ぎゃっ! ω∑#%¥※ー!!』
ちょ、大福、めっちゃ怒ってる。
興奮しすぎて巻き舌すぎて、なに言ってるのか分からない。
対し噛まれるサビ猫は、大きな霊体を縮こませると、
『へ、へ、へにゃあ!!』
これ以上ない弱そうな声で鳴いた。
容赦のない大福は、気弱な感じで『へにゃへにゃ』鳴いてるサビ猫に、さらなる追い打ちをかけた。
『ふっがぁぁぁ!(ケリケリケリケリ!)』
首元をガブガブしながら同時、後ろの足で連続キックをお見舞いしたのだ。
『へな、へなぁ……へにゃぁぁん!』
サビ猫はこれ以上ない情けない声で鳴いた。
そしてすこぶるへっぴり腰で、霊体をくの字に折り曲げて、荒ぶる姫から逃げようとして…………ボンッ!
謎の音がした。
たとえるならアレに似ている。
カップ焼きそばを作る時、お湯をシンクに流した時にするような、いきなり鳴ってビックリしちゃう ”ボンッ!” ってあの音。
そんな音がした直後。
巨大なサビは、元の小さな猫の姿に変化した。
で、戻るやいなや。
ツタタタタターーー!
ダッシュで僕に駆けてきて、助けてくれと言わんばかりに膝の上に乗ってきたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!