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「わっ!」
サビ猫に飛びつかれ、そのままヨロっとベッドの上に腰かけた。
膝の上には推定3~3.5キロの小さな猫。
斑の毛皮をボワッと逆立て『へにゃっ!へにゃっ!』と鳴きながら、小さなオデコを僕の脇腹に押し付けた……が、それだけじゃ終わらない。
脇腹と下げた腕、その僅かな隙間に頭をグイグイ押し込んで、首まですっぽり入った所でようやくサビは動きを止めた。
”うん” とも ”へにゃ” ともなんにも言わず、ただただジッと息を潜めているのだが……こ、これってさ、
頭隠して尻隠さず____
じゃないか……?
確かに頭は隠れてるけど、首から下は清々しいほど丸視えだ。
ま、まさかサビ猫……これで隠れたつもりなの?
ウソだろ? や、だって、いくらなんでもコレはナイ。
こんなんじゃあ、すぐにお姫に捕まっちゃうよ。
せめてさ、背中の後ろに回るとか、ベッドの中に潜るとか、他にも色々あるでしょうに。
唖然としながらサビを視た。
頭を隠した小さな霊体は、ふわんふわんのパヤパヤで、思わず手が伸び丸い背中を撫ぜ撫ぜすると、
ゴロゴロゴロゴロゴロ……
気持ちが良いのか、大きな音で喉を鳴らし出したんだ。
サビ猫よ……せっかく鳴かずに静かにしてても、それじゃ台無し意味がない(ま、それ以前に霊体が丸視えだけどさ)。
ダ、ダメだこの仔……あまりに弱い、あまりにヘナチョコ。
こういう猫は手厚い保護が必要だ。
てか、こんな調子で生きてた頃とかどうしてたんだ?
今更ながら心配するよ。
湧き上がる保護本能。
ひたすらサビを撫ぜ撫ぜしてると、お怒りモードの大福が、優美なジャンプで膝に飛び乗り丸視えオシリに噛みついた。
『うっなーー!』←大福、雄叫びのあとカプカプカプカプ(どうも手加減してるっぽい)
『へ、へにゃっ!?』←サビ猫、どうしてバレたにゃー!(そりゃバレるだろ)
と、ココで。
真剣な猫達には悪いけど、僕にとってのフィーバータイムが始まった。
膝の上では2匹の猫がキャットファイトで団子になってる。
右に左にコロコロ転がり、2匹分の体重を(合わせて推定9キロ弱)ズシッと感じて至福時間、ナニコレ最高、ナニコレ極楽。
僕、希少の子で良かったよ、霊体に物理干渉出来るってマーベラスゥ!
……
…………
それから約10分後。
いつの間にやらキャットファイトが終了し、2匹の猫は互いの霊体を毛繕いし始めた。
サビ猫は目をつむり、さっきみたいにゴロゴロ喉を鳴らしてる。
ありゃま、すっかり仲良くなっちゃった。
可愛いなぁ……天国だなぁ……実家には大福とサビ猫と、それにきなこもいるんだもの。
そりゃ最高だ、仕事で来たのを忘れそうになっちゃうよ。
イカンイカンと気を引き締めて、僕は首をコキコキ鳴らして上を見た(下を視ると可愛い仔達にニヤけちゃうからね)。
さてこれからどうしよう。
まずはサビに事情聴取かな。
どうして岡村家に来たのか、目的はなんなのか、そういうのを全部聞いて、それで色々決めていこう。
この仔はあまりにヘナチョコで、とてもじゃないけど悪い子には思えない。
きっと事情があるんだよ、……なんて事を考えて、ぼんやり部屋を見ていた時だった。
ふと、目に入ったモノに僕は言葉を失った。
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