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上をしばらくジッと見て、それからすぐに下を視る。
下をしばらくジッと視て、やっぱりすぐに上を見る。
それを何度も繰り返す、似てるだけかもしれないし、思い込みかもしれないし、まだ今は、はっきりとは分からない。
高い目線の先にあるもの、それはたくさんのフォトフレームだった。
両親の使う茶色いタンスの天板に、歴代のウチの猫達がおすましポーズで並んでる。
白猫黒猫、パンダ猫に三毛猫も、トラシリーズは ”茶トラ” に ”キジトラ”、”サバトラ” だ。
どの仔も美ニャンで、どの仔も年を取っているけど、それはすなわち長生き猫が多いんだ。
よく食べてよく眠り、よく遊びまた眠る。
そうやって年を重ね、20年に届くかどうかで天に召されてニャン生を終える。
残された人間は悲しみに涙するけど、一緒に過ごした幸せな日々が消える訳ではない。
だからこうして写真を飾り、眠る前に思い出しては懐かしみ感謝をするのだ。
……
…………並ぶ写真、その中の1枚。
そこに写るのは岡村家の初代の猫で、名前は ”おはぎ”……と言うらしい。
”らしい” と言うのは、僕は直接知らないからだ。
正確に言えば、残念ながら記憶にないの。
この猫は、僕が生まれる少し前に迎えた仔。
そして……僕が2才になる前に、病気で亡くなってしまった仔なんだ。
母さん達の話によれば、”歴代の猫達の中で1番の優しい仔” で、幼い僕にぴったり寄り添い、泣けばぺろぺろ舐めてくれ、決して爪を立てる事なく面倒を見てくれていたんだって。
____本当に優しい猫だったわ、
____チビだけど人の言葉が分かるみたいな感じがしてた、
____穏やかで、のんびりしてて、ちょっぴりオバカなことろもあって、
____でも……ふふふ、そこがとっても愛しいの、
____写真を見てごらん、
____良い顔してるでしょう?
____毛皮も綺麗な柄でしょう?
____黒とオレンジの混ぜこぜ模様、
____こういう仔は ”サビ猫” って言うのよ、
____この仔を見てると甘いあんこの丸いのが食べたくなるから……
____それで名前を ”おはぎ” にしたの、
初代サビ猫。
その写真をジッと見る。
僕の記憶にない猫だけど、話はたくさん聞いてきた。
優しくてちょっぴりオバカな愛しい仔。
並ぶ写真で唯一若い2才の猫だ。
膝の上の幽霊猫。
その姿をジッと視る。
さっき視つけたばかりの猫だ。
ちょっぴりオバカで ”頭隠して尻隠さず”、それで隠れたつもりでいた仔。
変化を解けば小さくて、推定2歳の若い猫。
この猫はもしかして……でもな、サビ猫なんてそこいらじゅうにたくさんいるよ。
写真と比べて似てるような気はするけどさ、だからと言って確信はないんだよ。
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