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初代の事は話で聞いてはいるけれど……ごめんね、当時の僕は幼すぎて記憶に残ってないんだよ。
一緒に暮らして過ごす時間が多くなれば、どんなに似たよな柄の仔だって、他とぜんぜん違って見える。
ふとした表情、ふとした仕草、さわり心地も頭の匂いもその仔だけが持ってるものだ。
それを知らないものだから、この仔が初代かそうでないのか分からない。
そんな僕が、唯一知ってる事といえば……
膝の上で幽霊猫はお姫とくっつき大きな団子になっている。
白くてもちもち大福と、斑模様で丸くて甘そな____
「…………おはぎ、」
おいしい和菓子とおんなじ、母さん達が愛を込めてつけた名前だ。
上から視るとふっくら黒くておいしそう、一緒に緑茶が飲みたくなるの。
ホントにおはぎにそっくりだ。
優しい甘さでほっこりしちゃう、2つも食べたらお腹もいっぱい。
幸せがギュッと詰まった名前を呼んだ。
もしもこの仔が初代なら、なんらか反応を示すはずだが…………
『へにゃ?』
レスポンスは思った以上に早かった。
呼ばれた猫は丸くなった団子のままで、返事をしながら顔だけクルリとこちらに向けた。
偶然か?
それとも返事をしたのかな?
見極めようとサビた模様の可愛い顔をジッと視る……と、目が合って、途端喉が鳴りだした。
「おはぎ、」
もう一度名前を呼ぶと、『へな……』とごくごく小さく鳴いて、
パチ……パチ……パチ……
今度はゆっくり瞬きをし始める。
「おはぎ」
再び呼んだ、何度も何度も呼んでみた。
呼ばれた猫は飽きもせず、呼んだ数だけレスポンス。
試しに、「大福」とも呼んでみたけど、それはスルーでキョトンとしてた。
丸い顔、丸い霊体、丸い金目の斑模様。
黒と橙、混ざった色は甘いあんこを思わせて、”おはぎ” と呼べば嬉しそうに僕を視る。
……
…………間違いない。
命のないこの猫は、ウチの初代のサビ猫だ。
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