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『へにゃ! へにゃ!』
撫ぜながら名前を呼べば、膝の上でお腹を視せて、四肢を伸ばしてじゃれてくる。
隣に座る大福は、そのたび霊体にぶつかられるけど、気にするでもなくドドーンと余裕の香箱座り。
僕にとってのフィーバータイムは継続中だ。
斑毛様の正体が分かったところで事情聴取に移りたい。
おはぎの命が終わったのは、今から約28年前。
この仔は僕が生まれる少し前に保護されて、それから2年、僕らは一緒に暮らしたの。
亡くなったその後は、おはぎが実家に現れた事はない。
来れば僕には視えたはずだ、……だが1度も視なかった。
大学を卒業し、それを機会に僕は実家を出たけれど、出てからの8年間もそれらしき気配はなかった(そんな話も出なかったし)。
だからきっと、おはぎが現世にやって来たのは今回が初めてだと予想。
それまでは黄泉の国にいたはずなんだ。
そうでなければ長い年月、綺麗に霊体を保ってられない。
おはぎはどうして現世に来たの?
それだけじゃない。
どうやって来たかも気になるし、なによりなんで今なのか。
少しずつ……聞いてみるか。
おはぎのお腹をコチョコチョしながら、僕はゴキゲンな幽霊猫に声をかけた。
「おはぎ、たのしい?」
『へにゃ!』
「おはぎ、うんと昔、このオウチにいたよね?」
『へにゃ!』
おはぎは僕の質問に元気に答え、そのたびに可愛く頷く。
人の言葉は分かるみたいだ。
だけど……話す事はどうだろう?
僕の愛しのスィートハニー、大福も人の言葉を理解する。
理解だけじゃない、その気になれば話す事も出来るのだ。
前に一度、キーマンさんと人語で話していたのを聞いた事がある。
それはもう片言のレベルではなかった。
____笑止、
____声が震えているぞ?
____図星で動揺してるのか?
____弱いな、若き人の子よ、
なんて。
凛とした女性の声で力強い話し方。
霊力がない事を嘆くキーマンさんを、厳しく優しく諭していた。
種族をこえたバイリンガル、それが三尾の大福だ。
だけど……それだけ悠長に話せるのに、姫は決して僕に人語を使わない。
”うなぁ、うなぁん” と、可愛く鳴くだけなんだ。
どうして僕には話さないのか、その理由は分からない。
もし、もしもおはぎが人の言葉を話せるのなら、今回ばかりは是非とも喋っていただきたい。
現世に、岡村家に来た理由が知りたいんだ。
★大福がキーマン相手に人語で喋りまくったシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=384&preview=1
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