第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「ねぇ、おはぎ。キミは人の言葉が分かるんだよね?」 さっきの感じじゃ分かっているとは思うけど、念の為に聞いてみた。 するとおはぎは得意な顔して言ったんだ。 『へな? へっにゃーん♪』 くぅぅぅ! 可愛い、可愛すぎるぞ、キミィ!(ココからスーパーフィーバータイムに突入です) 「そうなんだ! スゴイねぇ、かしこいねぇ、おはぎは天才だねぇ」 先代くらいの勢いで、思いっきり褒めてみた。 や、でもね、本当にそう思うよ。 だって僕、英語とか出来ないし、日本語だって怪しいし。 褒めてもらって嬉しいのか、おはぎはさらにゴキゲンで、ひっくりかえってバタバタしてる(だから可愛い)。 香箱座りの大福は、そんなおはぎを優しくペロリ。 ああもうなにコレ。 すごいほのぼの、すごい平和、本気で仕事を忘れそう。 とは言え、忘れる訳にはいかないので、次の質問を投げかけた。 「じゃあさ、じゃあさ、人の言葉が分かるってコトは……喋れちゃったりもする?」 この質問が本命だ。 どうだろな、ドキドキしながら答えを待った。 するとおはぎは『へにゃん!』と大きく頷いたんだ。 「えっ! ホント!? すごいじゃない! ねぇねぇ、ちょっと喋ってみて! 僕に聞かせてよ!」 よっしゃキターーーーーーー! これで事情聴取は楽にいける! おはぎが人語で話しだすのをワクワクしながら待ていた。 どんな感じに話すんだろう? 大福みたいに大人な感じに話し出したら、ギャップに萌え死にしちゃうかも! 小さな霊体(からだ)をチョコンと起こし、膝の上に座り直したおはぎ。 チビ子は僕をキュートに視上げて、お口をモゴモゴし始めた。 『……モゴモゴ……モゴ……モゴモゴ』 僕と大福、一緒になっておはぎを視つめた。 おはぎはすぐには話さなくって、何度も何度もモゴモゴし、息を吸って息を吐いて、丸い背中をプルプルさせてと、なんだかすごく頑張ってる。 話すまでに長い助走が必要なのか、とにかく僕らはその時を待っていた。 『……モゴモゴ……へにゃ……へ……にゃ……ひにゃ……』 時間をかけて、ココ一番の真剣な表情で、搾るように声を出す。 だ、だいじょうぶかな? なんだかちょっぴり苦しそうだし、辛いなら無理しなくていいんだよ……と言おうとした時だった。 パヤパヤ毛皮をぼわっと逆立て、小さなお口をパカーッと開けて、 『ひにゃ……ひ……ひ……ひ……ひでみっ!』 大きな声で僕の名前を口にした。 「おぉっ!!」 + 『うなっ!!』 僕とお姫の声が重なり、テンションは急上昇。 すごいぞ! 本当に喋った! おはぎは人語が話せる仔なんだ!
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