第三章  霊媒師研修ー1

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「人間の脳は電気信号でやりとりされてるって聞いた事ない?」 「あります。でも僕の情報源はちゃんとした授業とかじゃなくて、ネット上での読みかじり程度ですけど」 「充分だ、エイミー。さて俺も専門じゃないが、人間の脳内は電気信号のやりとりで動いている……らしいけど、死んで肉体がなくなると本来ならそれで終わりになる。人は誰しも死ぬ時に悔いるもので、もっと勉強しておけばよかった、もっと人に優しくすればよかった、もっといろんな所に行きたかった、もっとおいしい物を食べたかった、とか思うんだ。だけど普通の人なら多少の後悔はあって当たり前。失敗しない人はいないし、小さな悪い事くらいなら誰だってしてる。人生、60点くらいがちょうどいい」 「そうかもしれませんねぇ」 「だろ? だから大抵の人は悔いる事はあっても、最終的にはこんなものだろうと成仏する。だけどな、その悔いが本人にとって大きな問題だったら? 例えば誰かに殺された、突然の事故で自分の死が受け入れられない、小さな子供を残して心配で死にきれない、とかさ。色々ある訳よ。そんな強い思いを抱えた人の脳内では何が起こってると思う?」 「さ、さあ? よくわからないけど社長が最初に言った、電気信号と関係があるのですか?」 「ビンゴ! 生前、脳内を飛び交っていた電気信号がすべて、怨みつらみ、心掛りを核にすごい勢いで集まり増幅していく。今まで手足を動かす為に出されていた電気信号をはじめ、生きる為、動く為に割り当てられてたもの全部な。その強い電気信号の集まりが霊体を造りだし、強い怨みや不安を燃料に動き回る。ちなみに幽霊が初夏から夏に多く視られるのはその時期湿度が高いからだ、水は電気を通し力を高めるだろ? 単純に考えて電気で出来た幽霊を視るのなら、視える側も電気体質の方が視えやすい」 「なるほど……でも社長、そういう体質の人の全てが霊を視る事ができる、って事は―」 「それは無い。あくまでも理由の1つだ。他にも人の感情に共鳴しやすいとかいくつかの条件が重なる必要がある、が、しかし、すべてが解明されている訳じゃないし、こんなに偉そうに講釈垂れたけどコレみんな仮説だからな! ま、一応有力な仮説って事で大体こんな感じなのかなくらいで覚えとけばいい。メモもとらなくていいぞ」
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