第二十二章 霊媒師 岡村英海

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◆ 上り坂の虹の橋。 そこをしばらく歩いて行くと、ある地点から下り坂となった。 僕とおはぎは止まる事なくテクテク歩き、そしてとうとう橋の終点に辿り着いた。 「わー! きれー! それに……(キョロキョロ)色んな動物達でいっぱいだ!」 僕は元々動物大好き。 猫が1番好きだけど、犬もウサギも鳥もカエルも、どの子もやっぱり大好きなんだ。 ココは……天国か? 視渡せば、広い大地に果てはなく、青い芝生が敷き詰められて、所々に木や花が生き生きと上を向いてる。 素晴らしい環境に、のんびりまったり寛いでるのは…… 猫犬ウサギにハムスター、フェレット陸亀ヘビに小鳥と、勢揃いに色んな子達だ。 「おはぎ! ココすごいね! 動物達の楽園だ!」 おはぎは『へにゃん!』と胸を張って得意気顔。 本当にすごいな、宇宙から虹の橋を渡ってきたら、その終点が天国だなんて驚きだ。 あ……でもな、そう言えば聞いた事があるぞ。 人に飼われたペット達。 その子らは、命を終えると “虹の橋のふもとの広場” で、飼い主が迎えに来るのを、遊びながら待っているって。 飼い主達がいつか命を終えた時、感動の再会を果たすんだ。 ココが……その広場なのか? 僕はおはぎに聞いてみようと、目線を下におろしたのだが、 『へにゃっ!』 ツタタタター! いきなりダッシュで僕の元から離れていった。 「ちょ! どこ行くのー!」 慌てて後を追いかけようとした時だった。 毛玉の行く先、そこにもう1匹の斑模様の毛玉が寝そべり、ザリザリと自身の毛繕いに勤しんでいたのだ。 「え……? おはぎが……2匹?」 走るおはぎは寝そべるおはぎにダイブして、小さな霊体(からだ)が重なった時、2匹は1匹に融合された。 「おはぎがおはぎの中に入っちゃった、」 寝そべるおはぎは、特に騒ぐ様子もないけど、僕は心配になりそっと傍に近寄った。 「……おはぎ、大丈夫?」 しゃがみこんで声をかけた……が、返事はない。 それどころか……どうも僕の姿が視えてないようだった。 なんで……?  思わず手を伸ばす、そして指でおはぎの鼻をさわろうとしたのだが…………スカッ! 指は鼻をすり抜けてさわる事が出来なかった。 なんで……? なんで……? ………………あ、そっか、そういうコトか。 これってさ、僕の霊視が成功したって事じゃない? 予想が正しければ、ココはおはぎの過去なんだ。 その過去に僕はいる、だからまわりに僕の姿は視えないし、さわる事も出来ない。 春のOJT。 ユリちゃんのお母さん、貴子さんの過去を視た時とおんなじだ。
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