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変えられない過去の世界。
僕はそこで、過去のおはぎに寄り添った。
この子がどうして現世に来たのか、このまま視てれば分かるかもしれない。
寝そべるおはぎは一通りの毛繕いが終わると、のそりと立ってのんびり歩く。
そして、小さな小川のほとりに座ると、んべんべと綺麗なお水を飲みだしたのだが、あはは、可愛い。
口の回りがビシャビシャだ。
たっぷりのお水を飲んで、大満足の小さな毛玉はキョロキョロと回りを視渡す……で、
『あっ! あんなトコロにいた!』
えっ!
おはぎが喋った!
や、ちょ、大丈夫なの?
だって喋ると疲れちゃって、また倒れちゃうんじゃないの!?
僕の心配をよそに、おはぎは元気に走り出す。
早っ! え、あ、なんか……大丈夫みたいだな。
どうして喋り出したのか、その謎は謎のまま……なんだけど、まあいいや、言葉の壁がなくなるのは僕にとって好都合、これも今度先代に聞いてみよう。
とりあえず追いかけようと、急いで走り出したんだ。
だけどその時、僕の心臓は跳ね上がる程ドキンと鳴った。
え……? うそ……あれって、もしかして……
跳ねる鼓動を感じつつ、マンガのように目を擦ってジッと視た。
目線の先、そこに映るは2匹の猫。
1匹はおはぎだ。
もう1匹は……はしゃぐおはぎに抱きつかれ、もみくちゃにされているのは雪のような白い毛皮の…………大福だ!
マジか!
大福とおはぎはココで一緒だったのか!
ああ、そうか。
だから最初に会った時、おはぎは迷わず姫に向かって行ったんだ。
今みたいに、はしゃいで抱きつき甘える為に。
ん……でもな、それならどうして大福は、隠れたりしたんだろ?
本当はおはぎが苦手だったりする……?
いや、それはないな。
だって2匹になった途端、仲良く互いに毛繕いしてたじゃない。
むぅ……分からん……ま、視てればそのうち分かるかな?(分かるといいな)
2匹の様子を至近距離でウォッチング。
僕は早々また驚く事となった。
『小雪! 小雪! 今日はなにして遊ぶ?』
白い毛皮にしがみつき、おはぎは甘えてそう言った。
今……大福に向かって “小雪” って言ったよね。
大福、本当は小雪ちゃんって名前なの?
聞かれた大福は、ザリザリとおはぎを舐めてこう言った。
『そうねぇ、日向ぼっこが良いわねぇ』
この声……!
あの時と同じだ!
キーマンさんを厳しく優しく諭した声、その音色も話し方も全く一緒!
『日向ぼっこぉ? んー、それも良いけど追いかけっこしようよぉ! ねぇてば小雪ぃ!』
何をしたいか聞いといて、結局自分のしたいコトを主張するチビ子。
大福は怒るでもなく、呆れるでもなく、笑いながら言ったんだ。
『良いけど……おはぎは走るの遅いんだもの。すぐに捕まえちゃうわ』
た、確かに。
猫にしてはおはぎは遅い。
ま、そこも可愛いけど。
『へにゃっ! そ、そんなコトない! おはぎ早いもん!』
『ふぅん、そうだったかしら』
『えと……そだよ、早いんだよ、』
あらら、だんだん声が小さくなって。
本ニャンも遅い自覚があるようだ。
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