第二十二章 霊媒師 岡村英海

58/159
前へ
/2550ページ
次へ
『おはぎ、おいかけっこはまた今度。ほら視て、ココにハムスターがいるでしょう? さっき眠ったばかりなの。だから私、今は動けない』 ハムスター?  そんな子どこに……と思ったらいた! 香箱座りの胸のトコ、ちょびっと出てる前足に乗っかって、雪のように真白なハムスターが眠ってる。 気づかなかった、大福と同じ色で同化してたんだ。 そのハムスターは安心しきった無防備さでスヤスヤと眠っていた。 大福は目を細めハムスターを、そしておはぎを視る。 おはぎは途端、声を潜めてこう言った。 『……ちぇ、ハムが寝てるんじゃ仕方ない。日向ぼっこでガマンする』 おはぎは尻尾をぶんぶん振って不満そうにしてるけど、だけどそそくさ姫にくっつき香箱座りで落ち着いた。 か、可愛い……白猫とサビ猫が大きな団子で、ハムスターは小さな団子。 3匹仲良く寄り添って、暖かな陽ざしに目を閉じる。 平和だなぁ……ほのぼのしながらまわりを視れば、他の子達も似たり寄ったりですごしていた。 あそこにいるのは……ウサギと陸亀だ。 ウサギはちまっと小さくて、長い耳はシャキンと空に向いている。 ふかふか毛皮は淡いベージュで、ミカンの汁を薄めたような優しい色だ。 そのウサちゃんは亀の甲羅にヨイショと登り、『りっ君、小川に連れてって』と声を掛けていた。 ”りっ君” って亀のコト? 言われた亀は『オッケー』と答えると、大きな霊体(からだ)でノソリノソリと小川に向かって歩き出す…………お、遅いな。 なんでわざわざ亀の甲羅に乗るんだろ、ウサちゃんなら自分で歩けば早いのに……なんてね、野暮なコトを思ってしまった。 あの子達はあれでいいんだ、だってすっごく楽しそう。 ウサギと亀はそろって歌を歌い出し、途中で亀は『歩くの早い? 落ちないように気を付けて』なんて気遣いまでみせている(ウサちゃんは『ちょうどいい』と答えてた)。 鳥と遊ぶ大型犬、空を泳ぐ熱帯魚、フェレット、カワウソ、チンチラ、アヒル、……それと、カエルにジト目で視つめられタジタジになってるヘビもいる。 本当にいっぱいだ。 みんなココで、大好きな飼い主が迎えに来るのを待ってるの。 それはきっとおはぎも同じで、父さん達が迎えにくるのを楽しみにしてるんだろな。 そしてたぶん、ハムスターも大福も。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加