第二十二章 霊媒師 岡村英海

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それから……日が暮れて、辺り一面橙色に染まるまで、日向ぼっこは続いたの。 おはぎ達はうつらうつらと船を漕ぎ、僕はそれを、ただただ幸せな気持ちで眺めていたのだが……ココでおはぎがようやく目を覚ましたんだ。 『……へにゃ……よく寝たな……あ、もう夕方なんだ……早いなぁ。小雪、ハム、おはぎはオウチに帰るよ。また明日ね』 ”んー” と伸びをして立ち上がるおはぎ。 大福が『また明日』と返事をすると、ハムスターもモゾモゾ起き出しサビに向かって寝ぼけまなこで手を振った。 今日はこれで解散みたい……なんだけど、おはぎは今 ”オウチに帰る” と言ったよね? オウチがあるの? 誰かと一緒に住んでるの?  頭の中で3つのハテナを浮かべつつ、テテテと歩くおはぎの後ろを着いて行く。 歩きながら振り向けば、大福はハムスターを背中に乗せて、ゆっくりと歩きだすトコだった。 大福にも帰るオウチがあるのかな、あると良いな、そこはどんなオウチだろうと気になってしまう。 だけど……今はガマンだ、おはぎに集中しなくては。 …… ………… おはぎの後をテクテク歩いて着いた場所。 そこは小高い丘だった。 日は暮れて、上を視れば満天の星空が、大地を視れば遥か遠くに七色が、キラキラ煌めき夜空に橋を架けていた。 ここに……おはぎのオウチがあるのかな? キョロキョロと視渡すも、それらしき家はない。 あるのは1本の大きな木だけ。 幹が太く、豊かな枝葉がワシャワシャと伸びている。 形からして広葉樹だ、だけど種類は分からない。 『ただいまぁ』 言いながら、太い幹を前足でチョイチョイするおはぎ。 途端、幹は金色に発光し小さなドアが出現した。 「え!? 今なにをしたの? ドアなんて無かったのに、」 不思議に思って後ろから視ていると、開いたドアからおはぎはテクテク中へと進む。 僕も慌ててその後を追ったけど、人が行くにはドアは小さく、身体を屈めて押し込んで、なんとか入れるギリギリだった。 中に入ると……わぁ、けっこう広い。 確かに幹は太かったけど、明らかにそれ以上の面積がある。 視たままの目測だけど、学校の教室が2つ分……くらいの広さは余裕であると思うんだ。 明かりは暖色、魚の形のたくさんのライトがあちこち好きに宙を泳ぐ。 床は茶色で毛足の長い絨毯が、天井には猫サイズの吊り橋が、壁にはやはり猫サイズの踏み板が、段違いにたくさん取り付けられていた。 その他にも大きくてフッカフカのクッションがいくつも転がり、毛糸の玉や長い紐……要は ”猫が喜ぶあらゆるモノが揃った部屋” となっていた。
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