第二十二章 霊媒師 岡村英海

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おはぎの『ただいま』に、時間差で部屋のアチコチから『おかえりにゃー』と返事が返ってきたのだが、……あ……! ウ、ウソだろ……? ああ、でも……やっぱりそうだ、こんな所で会えるだなんて……たとえ霊視の中だとしても、こんなに嬉しい事は無い。 ひょこっ、ひょこっと首を伸ばし、可愛い顔でおはぎを視るのは、白猫黒猫、パンダ猫に三毛猫も、トラシリーズは ”茶トラ” に ”キジトラ”、”サバトラ” と…………岡村家で一緒に過ごした、歴代の猫達だった。 そうか……みんなココで一緒に暮らして、父さん達が迎えに来るのを待っているんだ。 猫達はそれぞれが好きな場所に寝そべって、帰ってきたサビ猫に次々声をかけていた。 『『おはぎ遅かったねぇ、また小雪のトコロ?』』 そう言ったのは白と黒の双子の猫で、名前は ”しらたま” と ”くろたま” だ。 天井からたわんで下がる吊り橋から、同時に顔を出している。 『うん、小雪と日向ぼっこしてたんだ』 答えるおはぎに、今度は床に転がるクッションから声がかかった。 あれはパンダ猫の ”シャチ” だ(パンダなのにシャチとつけたのは父さん)。 『 おはぎ、ゴハンは食べたの? まだなら白菜があるよ』 そうだ、よく覚えてるよ。 シャチは白菜が大好きなんだ。 生きてた頃も隙あらば白菜を狙ってたっけ。 『白菜食べる!』 嬉々として答えたおはぎ、どうやらこの仔も白菜が好きらしい。 ドスドスドス、と部屋の奥から貫禄で歩いてきたのは三毛猫の ”サン” 。 白黒茶色で三食団子が食べたくなるからと僕が名前を付けた仔だ。 『食べ終わったらコッチにおいで。毛繕いしてあげる』 そうそう、サンは面倒見の良い仔だった。 昔はよく、トラシリーズの ”茶トラ” 、 ”キジトラ”、”サバトラ” =(イコール) ”茶々丸” 、 ”キジ丸” 、 ”サバ丸” の世話を焼いていたのよね。 おはぎ以外はみんな揃って長生き猫で、どの仔も大人で落ち着きがあった……というのはウソ。 落ち着きがあったのは、しらたまとくろたまとシャチとサン。 残るはトラのシリーズだけど、この3匹が生きてた頃のヤンチャっぷりといったらもう……思い出すと笑っちゃう、当時は毎日がお祭り騒ぎで大変だった。 あの頃の岡村家には、同時期にサンとトラの仔3匹がいて、年上のサンは、あとから来た仔猫達をまるで自分の子供のように可愛がっていたんだ。 お母さん的存在で、悪さをすれば愛の肉球パンチを食らわせていたのだが、トラの仔達は死して尚、変わってないようで…… 59d78a5a-3a82-4c2e-8e8c-71072a911d9d 2021、11、27挿し絵追加です。
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