第二十二章 霊媒師 岡村英海

61/159
前へ
/2550ページ
次へ
猛ダッシュでおはぎの前にやって来た三兄弟は、これまた言いたい放題騒ぎ出した。 『はにゃっ! また小雪のトコロかよ!』←茶々丸、テレビで見るチンピラさん風にズィッと迫る。 『ひにゃっ! 小雪ってさ、ずーーーーっとココにいるんだってな!』←キジ丸、”オラオラオラー!” てな感じにオラつきまくり。 『ふにゃっ! もうナンジュウネンもココにいるのに迎えが来ないんだって!』←サバ丸、悪そうな顔でニヤニヤ笑う。 ちょっと……そんな言い方はないんじゃないの? 3匹のイジワルともとれる発言に僕が眉を寄せていると、反論しかけたおはぎよりも早く、サンが愛の鉄拳を食らわせた。 ペチッ! ペチッ! ペチッ!! 『あんた達、なんでそんなイジワル言うの! 小雪さんの迎えがまだ来ないのは良い事なの! それだけ主さんが長生きしてる証拠だもの。いつかそのうち来るわ。だって聞いた事があるのよ、小雪さんの主さんはとっても優しいお姉さんなんだって。そんな主さんが来ないはずないじゃない』 おぉ! サンって思った百倍大人じゃないか! さすがだな、僕よりよっぽどしっかりしてると感心してると、トラの仔達が声を大に喋り出す。 『はにゃっ! それにしたって遅いよ! もしかしたらお迎え来ないかもにゃ! でもダイジョブ! その時はオレ達と一緒にいればいいにゃ!』←茶々丸はフンッと仰け反り得意顔。一緒にって……あーもう、そういうコト言い出しちゃうのは反則だ。 『ひにゃっ! んだな! ウチの父さん(トウ)母さん(カア)も優しいから! 1匹くらい増えたって何も言わないにゃ!』←キジ丸もオラつきフェイスで大威張り。んもーキジ、おまえもか。そして岡村家をよく分かってる。 『ふにゃっ! だったらハムスターも一緒に来るにゃ! 猫じゃないけどダイジョブにゃ! バレないにゃ!』←サバ丸……薄々は分かっていたけど、キミもけっこうオバカだな(だがそれが良い)。バレるに決まってるでしょ、猫とハム、ぜんぜん視た目が違うでしょうよ。でもま、ハムが来るのも大歓迎さ。 ぷっ! 堪えきれずに笑ってしまった。 トラの仔達は口は悪いがやっぱりウチの仔。 なんだかんだと優しい仔達だ。 迎えがなければ岡村家に受け入れる、そう言っているのだから。 …… ………… 独り言ちて笑った後、僕は少し考え込んだ。 ココに来て、 大福を視て、その時から胸の奥はモヤモヤとくすぶっている。 サンは言ってた。 ____小雪さんの主さんはとっても優しいお姉さんなんだって、 ____そんな主さんが来ないはずないじゃない、 大福が……小雪ちゃんだった頃の飼い主さんは女性なんだな。 主さんは優しい人で、大福はずっとずっとココで迎えを待っている。 それなのに今現在、リアルで姫と一緒にいるのは僕なんだ。 主さん、どうしたんだろう? 大福に、一体なにがあったのだろう……?
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加