第二十二章 霊媒師 岡村英海

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その謎が解けたのは、夜が明けた次の日の事だった。 昨日の晩は猫達のオウチに泊まり、僕としてはめちゃくちゃ幸せな夜を過ごせた。 だってそうだろ? 亡くなった愛する家族と再会出来た。 そりゃあココ(・・)は過去の世界で、僕が勝手に霊視で視てるだけだけど、それでも、それを差し引いてもやっぱり泣くほど嬉しかったのだ。 昔の元気な姿のままで、猫達はお喋りしながらゴハンを食べたり眠ったり、毛繕いをしてみたり、毛糸ではしゃいで遊んだり……そうやって、楽しそうにしてるのが嬉しくて幸せでありがたくてたまらなかった。 そして、いつか必ず父さん達が迎えにくると信じてやまず、楽しみに待っているのが健気で愛しく、さらにはサンの、 ____トウとカアが先に迎えに来ると思う、 ____英海はまだ子供だから、うんと後から来るんだよ、 ____そしたらみんなで迎えてあげよう、 ____今いる猫も一緒に、また家族で楽しく暮らそう、 これがトドメになった。 嬉しくて、そんな未来を想像したら涙腺が大決壊。 その時は大福も一緒に……と思いながら、僕は眠りについたのだ。 陽が登り目が覚めて、遊びに出かけるおはぎのあとを着いて行く。 他の仔達はお出かけする猫、二度寝する猫、木に登る猫と、それぞれ好きに1日を過ごすようだった。 昨日、大福に『また明日』と言っていたおはぎは、宣言通り丘を下り、小川近くの広場に向かう。 途中おはぎは、道に咲くキレイな花の匂いを嗅いで、落ちてる小石にじゃれついて……と、寄り道ばっかりするもんだから、後ろからきた亀のりっ君に抜かされた。 マイペースだなぁ。 おはぎは道をゴキゲンで歩いてる。 ま、言ってもおはぎは2才の仔猫(世間では2才は仔猫じゃないかもだけど、岡村家では5才までは余裕で仔猫なのだ)。 何を視ても楽しいのだろう。 猫達のオウチでも、おはぎ以外はみんな成猫。 寄ってたかって世話を焼かれ(あのトラの仔達ですら焼くんだよ)、ポジション的には末っ子だから、余計に仔猫のままなんだろな。 そんなおはぎを僕はのんびり視守って、広場に着いたのはだいぶ日が高くなっての頃だった。 大地は一面青い芝生が広がって、そこに真白な猫がいれば当然目立つ。 おはぎも僕も、大福とハムスターを視つけるのにそう時間はかからなかった。 『小雪みっけ!』 嬉しそうなおはぎの声。 おはぎの目線を追ってみれば、目測おそらく4~5メートルのその先に、大福とハムスターの姿が視えた。 ハムスターは今日は元気に起きていた。 小さなハムは大福によじ登ってご満悦。 あはは、姫の霊体(からだ)はハムにとってのアトラクションだ。 楽しそうに頭の先から尻尾まで、ヨチヨチしながら移動する。 そのハムがお姫の尻尾にしがみ付いた時だった。 大福はハムが喜ぶと思ったのだろう、この頃はまだ1本だけの長い尻尾を左右にゆっくり動かしたのだが……ハムはそれに驚いて、落とされまいと尻尾の先をガブリと噛んでしまったのだ。
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